【6月30日 AFP】イラク人少女のハウラちゃん(4)の上半身には、あざのように黒くなっている部分が広がっている。本来ならば外で遊んだり、友達の家に行ったり、おもちゃの取り合いのような些細なことでけんかをしたりしている年齢だが、その先天性の皮膚異常によって村では孤立してしまっている。

 イラクの首都バグダッドから200キロ南方、ディワニヤ(Diwaniyah)にある村で、ハウラちゃんの両親は毎朝、娘に襟の高い長袖の服を着せるが、どうしても首の一部は出てしまう。結局はハウラちゃんは指をさされ、やじられる対象となってしまう。

 黒いベールをかぶった母親のアリア・カフィフさんは、「あと2年もすれば学校に行かなくてはならない。本当に憂鬱(ゆううつ)です」と語る。「周りの子どもたちがどう反応するか? うちの子が学校に馴染めるかどうか自信がない。娘の将来にとって一番のハードルです」

 ハウラちゃんの皮膚の異常は、肩と背中全体、そして両腕と首に広がっている。その表面には毛も生えている。しかし問題は外見だけではない。この巨大な母斑には、悪性黒色腫(メラノーマ)という最も危険な皮膚がんのリスクがつきまとう。

 皮膚科医のアキル・カルディ(Aqil al-Khaldi)医師は、「最悪」の結果を避けるためには皮膚移植やレーザー手術などの治療が最適で、さらには精神的なサポートも必要だと語る。

 しかし、ハウラちゃんの家族はそのどれにもかけるお金がない。

 2003年にサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権が打倒されてから15年間の混乱、さらにはその前の10年間に敷かれた対イラク制裁措置で、同国の医療システムは完全に崩壊している。