■色の心理ゲーム

 勝利の方程式に必要なのは、最高の選手と最高の監督、高度なスキルと幸運だけではない。ある研究によるとチームカラーも優位をもたらし得る──特にそれが「赤」のときだ。

 英チチェスター大学(University of Chichester)のスポーツ心理学者、イアン・グリーンリーズ(Iain Greenlees)氏が共同執筆者となった研究論文は、赤いユニホームはペナルティーキックの場合に、キッカーが着ていても、ゴールキーパーが着ていても利益があるとしている。

 この研究によると、赤いユニホームを着た選手は味方から見ても相手から見ても、より優位でテクニカルなプレーヤーであるとの印象を与えるため、相手チームに対しては不安と、結果的にパフォーマンスの低下をもたらすのだという。

 AFPの取材に応じたグリーンリーズ氏は、人が赤い色から血の色を連想して危険と感じたり、怒ったときの顔色と結び付けて攻撃的だと捉えるように進化したとする一説を紹介した。その他にも、赤は目立つため相手チームの集中力がそがれやすいといった見解もあるという。

 確かに「赤いチーム」の成功の証しとなるエピソードはある。例えば、イングランド代表がW杯で優勝した1966年のイングランド大会。この年のW杯決勝では、対戦相手の西ドイツのユニホームが白だったために、イングランド代表は通常のホームカラーの白ではなくアウェーカラーの赤いユニホームで試合に臨み、勝利。これまでで唯一の優勝となった。

 しかし、W杯優勝回数が最も多いブラジルのユニホームが黄色なことや、前回大会優勝国のドイツが白いことはこれでは説明にならない。

 例えば、緑色のピッチ上で白いユニホームの視認性が高まり「パス成功率が上昇する」可能性があるとの研究結果がある。反対に緑色のユニホームは相手から認識されにくく、チームのディフェンス能力を向上させるという。

 何色であれ全体的な影響は小さく、「白であれ青であれ緑であれ、秀でたチームは、赤いユニホームを着た平均的なチームに勝るはずだ」とグリーンリーズ氏は指摘する。だが、チームの力が均衡している場合には、ユニホームの色が多少局面を変えるかもしれない。