【6月8日 AFP】男性が支配する製造業界で闘い抜き、イラン初とされる女性社長に上り詰めた女性が、欧州の投資家の支援を得て大成功を収めようとしていた──米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領によって、再び地面に叩きつけられるまでは。

 レイラ・ダヌシュバル(Leila Daneshvar)さん(37)は幼い頃、よく父親の作業場の床に座り、何か手伝わせて欲しいとせがんだものだった。

 ダヌシュバルさんはAFPの取材に語った。「父は機械工でした。私は父と一緒にガレージにいる時がいつも一番楽しかった」「でも当時のイランには機械系のキャリアがありませんでした。だから私はインドのカレッジに進学しました。そこでも、新入生139人のうち女子学生は私一人でした。とても辛かったです」

 だが彼女は耐え抜いた。今はイランで自ら会社を経営し、病院や高齢者向けの移動用機材を製造している。

「欧州へ行った時、障害のある人たちが幸せで自立した生活を送っているのを目の当たりにしました。私の国にもこういう機材があったらいいなと思い、こう考えたのです。『そんなに複雑には見えない。私は機械技師よ。私ならできる』と」

 ダヌシュバルさんの会社は社名を「KTMA」といい、販売は「Lord」というブランド名で行っている。同社に転機が訪れたのは2016年初め。イランが大国らと結んだ核合意が履行され、国際社会からの制裁が解除された直後だった。

 制裁解除から数か月も経たないうちに、スウェーデン人投資家のアンナ・ルスベルグ(Anna Russberg)氏が、同社の株式の25%を買い取ることに同意。大いに必要とされていたビジネス感覚と資金が投入された。

 ルスベルグ氏は「レイラさんの会社は品質が良いと評判でしたが、ここではほとんど知られていませんでした。私はビジネスを根底を覆す必要があったのです」「それは功を奏しました。私たちは良きパートナーだと言えるでしょう。彼女はエンジニア、私はビジネスウーマンで、お互いの知識を尊重しています」

 イランの家父長的な実業界に女性が身を置くとやりにくいこともあるかもしれないが、その一方で強みになることもある。

「あなたが製造業者だったら、ヒジャブ(イスラム女性が頭を覆う布)は手ごわいですよ」。レイラさんはそう言って笑うと「でも女性であることには強みもある。皆に覚えてもらえますから」と言い添えた。

 アンナさんも「皆、私たちをどう扱えば良いのか、はっきりと分かっていない。そのことは、交渉する上で役に立ちます」とレイラさんに同意した。