■「カミングアウトしても大丈夫だと示したかった」

 パン牧師は香港でこれまでに50組以上の同性結婚式を執り行ってきた。2015年にはたった1組だったが、今では月に1、2組の同性結婚式を行っている。

 香港では1991年、同性愛が非犯罪化された。毎年プライドパレードが行われ、ゲイシーンは活気にあふれているにもかかわらず、いまだに中国のしきたりには保守的な考えが深く根付いている。性的指向に基づく差別の非合法化が香港立法会(議会)に提案されたが、まだ実現していない。裁判所は、英国の女性同性愛者に香港で配偶者としての権利を認める判決を下したが、香港政府は上訴している。

 香港の議員で初めて同性愛者であることをカミングアウトしたレイ・チャン(Ray Chan)議員は、「国際反ホモフォビア・反トランスフォビアの日(IDAHOT)」に向けた週末の集会で、「政府はいかなる変化も望んでいない」と語りかけた。毎年5月17日がこの日に当たり、LGBTの権利に対する意識を高める目的がある。同議員は、「最終審の法廷で負ける最後の最後まで、政府は譲歩しようとしない」と訴えた。

 反LGBTの活動家ロジャー・ウォン(Roger Wong)さんは、「市民の支持がない限り、政府は同性婚を法的に認めたり、LGBTの人々を支援したりする理由はない」と指摘している。同氏はAFPに対し、「同性婚は一般大衆の100%が認めた場合に限って行われるべきだ」と述べた。「そんなことはあり得ないと私は思うが」

 ソーさんとチャンさんは、社会は変わってきているが、LGBTの人々が同性愛の関係を安心して公にできるようになるのはかなり先のことだと感じている。

 チャンさんは、LGBTの人々が家族や一般の人々に打ち明けて「同性愛者が存在するということ」を示し、存在を認めてもらう必要があると言う。

 ソーさんとチャンさんは、結婚式は自分たちにとって特別な日というだけでなく、他の人たちの役割モデルになるという意味合いもあると言う。「香港はキリスト教の価値観や伝統的な考え方があり、自由な社会になりつつあったのが元に戻り始めている。同性愛者だとカミングアウトしても大丈夫だと示したかった」と、チャンさんは語った。(c)AFP/Pak YIU