■魚の「育児室」

 今回の研究は、約2万1000年前に最終氷期間の最寒冷期(最終氷期最盛期、LGM)に入る以前からの期間を対象としている。

 当時の平均海水位は現在より約120メートル低かった。

 LGMに至るまで海水位が降下したのに伴い、約3万年前と2万2000年前に2回の「壊滅的大量死」事象が発生したことを、研究チームは発見した。

 これらの事象はサンゴ礁が空気にさらされたことが原因で起きた。その後、生き残ったサンゴが回復を図るために海の方へ徐々に移動した。

 LGMを過ぎて氷床の融解が進むにつれて、今度は海水面上昇に起因する大量死が1万7000年前と1万3000年前に2回発生したことを、研究チームは明らかにした。これらのケースでは、サンゴ礁は陸の方へ移動した。

 そして約1万年前に5回目の大量死事象が起きた。これは海水面の上昇と同時に大量の堆積物が海に流出したことが原因とみられる。

 ウェブスター氏によると、地球が新たな氷河期に向かうと考えられているため、グレートバリアリーフは「過去の地質学的パターンに従うとすれば、いずれにせよ今後数千年以内に再び死滅寸前に追い込まれる可能性が高い」という。

「だが、人為的な気候変動がこの死を早めるかどうかは、現時点ではまだ分からない」

 海洋生物種の約4分の1のすみかとなっているサンゴ礁は、多くの魚種の稚魚が育つ「育児室」の役割も果たしている。(c)AFP