【5月16日 AFP】ロシアの組織的ドーピングスキャンダルを報道したドイツの記者が、ロシアから入国ビザ(査証)の発給を却下されていた問題で、ロシア政府は15日、ドイツ政府などからの働きかけを受けて、記者に「例外的に」ビザを発給し、サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)の取材を許可すると発表した。

 この問題では前週、ドイツのハイオ・ゼッペルト(Hajo Seppelt)記者がロシアから締め出されたことが判明。ドイツ政府はこの措置を「間違ったもの」と評し、国際サッカー連盟(FIFA)も「当該の記者が不自由を強いられていることを残念に思う。何度も述べた通り、報道の自由はわれわれの人権方針に沿うもので、FIFAにとっての最重要事項だ」と話していた。

 こうした状況を受けて、両国の政府関係者が話し合いを行った結果、開催国ロシアは考えを改め、ゼッペルト氏の入国を認める方向となった。ロシア大使館の広報担当者は「われわれがルールに例外を設けたため、W杯に向けて彼がロシアを訪れることが可能になった」とコメントしている。

 その一方で、強大な権力を持つロシアの調査委員会は、独自に行っているドーピング疑惑の調査でゼッペルト氏が重要な参考人であるとして、入国した場合は聞き取り調査を行うと話しており、同氏はロシア行きに二の足を踏む可能性もある。

 ロシアに関しては、ゼッペルト氏も関わったドキュメンタリー番組などで国家ぐるみの薬物違反が発覚し、今年2月に行われた平昌冬季五輪でも代表選手の派遣を禁止されていた。(c)AFP/Dmitry ZAKS/Hui Min NEO