■多くの自治体が「待った」

 初めに待ったをかけたのは、モントリオールの東に位置する小さな自治体ブロモン(Bromont)だった。同地では1件の新たなビットコイン(Bitcoin)事業が同市の総余剰有能電力36メガワットのうち30メガワットの使用を求めていた。

 その後、近隣のブロムミシスクワ(Brome-Missisquoi)でもビットコイン採掘事業者に同様の禁止措置を取った。「われわれの地方で暗号通貨をマイニングするコンピューター倉庫の開設を求める事業の大半は、極めてわずかな雇用創出しかもたらさない」と同町の行政官、ロベール・デマレ(Robert Desmarais)氏は指摘する。

 ハイドロケベックの広報担当マーク・アントワーヌ・プリオ(Marc-Antoine Pouliot)氏によると、この動きは中国が暗号通貨取引の規制に乗り出した後の昨年9月に始まった。同氏は「この業界の将来は予想できない」と述べ、当局はどうすればケベック州内で各プロジェクトが持続可能な形で確立され得るのか知りたがっており、電気料金引き上げの可能性も排除していないと説明した。

 ケベック州に寄せられた各プロジェクトの提案を合計すると、ハイドロケベックの総電力容量4万メガワットのうち9000メガワット以上が消費される計算になる。州内の総世帯の83%の消費電力に相当する量だ。

 プリオ氏によると、同州への移転に関心を示す大半は中国の企業だ。モントリオールでは初となるブロックチェーン国際イベントを今年4月に開催する準備を進めていた主催者らは、ロシアの投資家らも関心を寄せていると語った。

 ケベックでは「電力は料金が手頃で、豊富にあり、環境に優しい」とプリオ氏は言う。そのほとんどが州北部の大規模水力発電ダムで発電され、涼しい気候のため施設の冷房も少なくて済む。