【5月11日 AFP】ロシア政府の関連企業が2016年米大統領選の前後にフェイスブック(Facebook)やインスタグラム(Instagram)に出稿していたとされる広告3000点以上のデータが10日、公開された。どのように米国民の怒りをあおり米社会を分断しようとしたのか、組織的な取り組みを浮き彫りにするデータベースだ。

 フェイスブックやインスタグラムから削除されたこれらの広告は、ロシア政府とつながりのあるサンクトペテルブルクの企業「インターネット・リサーチ・エージェンシー(Internet Research Agency)」が2015~17年に出稿したとされる。同社はロシア国内とロシア政府が政治的影響力の拡大を狙う国々を対象に、インターネットやソーシャルメディアを通じて偽情報や政治的プロパガンダを流布する活動を行っているとみられている。

 米下院情報特別委員会(House Intelligence Committee)の民主党会派が公開した広告や投稿記事のデータからは、異なる社会集団間の対立をあおる一定のパターンが読み取れる。2016年米大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)氏を支持するよう働きかける一方、対立候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏を支持する気をそぐ試みだ。

 たとえば、保守的な傾向を持つユーザーのフェイスブックのページには、警察官を狙った襲撃事件や移民の危険性を強調したり、アフリカ系米国人の活動家たちとイスラム教徒を結び付けたりする内容の広告が掲載されていた。

 対照的に、アフリカ系米国人寄りのページには警察の暴力的言動や白人至上主義団体に重点を置いた広告が掲載され、黒人たちの怒りを呼び起こす内容の記事に飛ぶリンクが張られていることもあった。

 中には、単純にかわいいものやユーモラスな内容の広告もあったが、これらは「いいね」を稼いで政治色の濃いページにユーザーを誘導するのが目的とみられる。

 有権者の投票の動機を少しだけ誘導しようと巧妙に狙った広告もあり、たとえば重要州の保守層をターゲットとした広告では、ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)大統領(当時)の言葉「神の下に一つの国であることを忘れてしまったら、わが国は破綻するだろう」を引用していた。

 下院情報特別委員会のアダム・シフ(Adam Schiff)議員(民主党)は「これらの広告を公開することで、究極的には合法的な政治的表現と政治討論を守り、外国の敵対勢力に汚染された情報エコシステムから米国民を保護することになると願う」と述べた。(c)AFP