■合成繊維との闘い

 アフガニスタン北部マザリシャリフ(Mazar-i-Sharif)の市場を訪れると、シェルザドさんが直面している課題がありありとわかる。

 そこでは、ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)前大統領が着用していたことで欧米でも知られるようになった、詰め物をした縞模様のコート「チャパン」が、露天の店先に山のように積まれていた。

 その合成繊維を見て、シェルザドさんは「派手過ぎます」と断じた。

 しかし多くの消費者にとって、こうした品は魅力的だ。安価な模倣品は、絹ではなくナイロン製の生地に伝統的なデザインがプリントされているだけだが、価格は3分の1程度だ。

 店主のアブドゥラさんは、「伝統的なチャパンが2500アフガニ(約3900円)なのに対し、こちらは800~1200アフガニ(1200~1900円)ほどです」と話す。

 現在は、ハンドメードの絹のチャパンを買えるのは富裕層のみで、結婚祝いの贈り物として購入されることもある。一方、中流階級や労働者階級は、合成繊維のチャパンを選ぶことが多い。

 マザリシャリフ全域の市場では、ナイロン製のブルカも溢れている。ブルカは、部族の文化によって女性が着用を命じられている全身を覆う衣服だ。あちこちで見かけるこの衣服の素材も、海外からの輸入が多くなっている。

 ザリフの染め師兼織工のハシェムさんは、マザリシャリフ郊外にある泥壁の自宅の中庭でAFPの取材に応じ、「中国にインド、パキスタン。何もかもが外国からやってくる」と話した。ハシェムさんはここに仕事場を設け、自宅で作業を行う女性の機織り職人10人を管理している。

「昔は10家族が働いていたが、今は4家族だ」ハシェムさんは、染め上がったばかりの一かせの綿を絞りながらそう話した。

「以前は、原料の80%は地元の市場から仕入れていたが、今ではそれが外国製に置き換わった」