【5月12日 AFP】父親が拷問され殺されたと知ったとき、ヤラ・ハスバニ(Yara al-Hasbani)さんはシリアのダマスカス(Damascus)で、「ロミオとジュリエット」のためのメークの仕上げをしていた。

 その瞬間からハスバニさんの世界は変わった。

「あの瞬間、自分の中の少女の部分は死んでしまった」。ハスバニさんは残酷な内戦が始まった2011年、家族とともに政府に対する抗議活動を行った。

 それから6年以上が経ち、24歳になったハスバニさんはパリで新しい生活を送っているが、コンテンポラリーダンスのステージ上では祖国での戦争に対する思いがあふれ出る。

 2016年にパリに移住した彼女がレピュブリック(Republique)やトロカデロ(Trocadero)などの広場で行った初期のパフォーマンスは、2013年に化学兵器による攻撃で殺された何百人ものシリアの子どもたちにささげられた。

 ハスバニさんは、「写真からインスピレーションを得て、子どもたちの丸まった体を表現した」と説明した。

 今取り組んでいるのはアラブ世界研究所(Arab World Institute)が6月23日まで開催するダンスフェスティバルで、ハスバニさんは自身の亡命の旅をたどる12分のソロパフォーマンス「アンストッパブル(Unstoppable)」を踊っている。

 将来の夢は、憧れのスウェーデン人振付師アレクサンダー・エクマン(Alexander Ekman)さんとダンスを制作することだ。だが、ヨルダンのザータリ(Zaatari)難民キャンプを訪れ、何万ものシリア難民の子どもに衣装を用意し、ダンス教室を開催し、ささやかな喜びを広げたいとも夢見ている。

 ハスバニさんはこれからも、振り付けのインスピレーションを祖国での恐怖の体験から得ることはやめないつもりだ。

 パフォーマンスは無言だが、「人々が忘れないよう声を上げ続ける」という。(c)AFP/Rana MOUSSAOUI