■「破壊を阻止」

 研究チームによると、すべてのスナメリは海に生息していた単一の祖先を起源とするという。長江のグループは約4万年前~5000年前、海水に生息する近縁種から分岐し「新たな環境に急速に適応」した。そのためには、遺伝子の変化が必要だった。

 研究チームは、腎臓の機能や血中の水分と塩分のバランスなどを調節する遺伝子に変化が生じたことを示す証拠を発見した。

 長江のスナメリは、淡水に生息するための遺伝的適応の「独自で個別化した」特徴を有していると、研究チームは指摘している。「長江個体群の独特の遺伝子構成を示している今回の遺伝子データにより、生息地破壊を阻止するための現在進行中の取り組みに拍車がかかることを、論文の執筆者らは期待している」と掲載誌の論文要旨は述べている。

 長江のスナメリは、国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト(Red List、絶滅危惧種リスト)」で絶滅危惧種に分類されている。最も大きな脅威は、川辺の産業からの汚染、船との衝突、刺し網などの漁具にかかることなどとされている。(c)AFP/Mariëtte Le Roux