【3月28日 AFP】フランスの首都パリで先週、高齢のユダヤ人女性が自宅で刺殺され、遺体に火をつけられる事件が発生し、隣人の男ら2人が殺人などの疑いで身柄を拘束された。当局は、反ユダヤ的な動機に基づく犯罪とみて捜査を進めている。

 殺害されたミレイユ・クノル(Mireille Knoll)さん(85)は第2次世界大戦(World War II)中、ナチス・ドイツ(Nazi)占領下のパリで行われたユダヤ人の一斉検挙と強制収容所への移送を逃れていた。

 同市東部にある集合住宅の小さな一室で一人暮らしをしていたクノルさんは23日、火災通報を受け出動した消防隊により、ベッドで遺体となって発見された。検視の結果、クノルさんは複数か所を刺された後、アパートに放たれた火で体の一部が焼けていたことが分かった。

 息子のダニエル(Daniel Knoll)さんによると、クノルさんはパーキンソン病を患っていた。か弱い高齢女性が殺害された今回の事件を受け、フランス国内のユダヤ人コミュニティーには衝撃が広がっている。パリでは約1年前にも、ユダヤ正統派の60代女性が、「アラーアクバル(神は偉大なりの意)」と叫ぶ近隣住民にアパートの窓から投げ出される事件が起きていた。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領はツイッター(Twitter)で、この「おぞましい」殺人事件を非難し、反ユダヤ主義と闘っていく決意を強調した。

 拘束された男2人には、殺人に加え、加重強盗と器物損壊の容疑が掛けられている。遺族の話では、1人は近くに住む20代の男で、クノルさんをよく訪ねていたという。警察筋によると、この男には性的暴行の前科、もう一人の男(21)には強盗の前科があるという。

 ジェラール・コロン(Gerard Collomb)内相が27日に議会で明かしたところによれば、男の一方はもう片方の男に対し、「あの女はユダヤ人だから金を持っているにちがいない」と言ったとされる。

 ある情報筋はこれに先立ちAFPに対し、容疑者の一人の供述内容と、クノルさんがユダヤ人であることを両容疑者が知っていたという事実から、被害者の信教が事件の動機と断定されたと説明していた。(c)AFP/Sophie DEVILLER and Clare BYRNE