【3月22日 AFP】元スパイの毒殺未遂をめぐって英国とロシアの関係が緊張する中、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英外相が21日、6月に開幕するサッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)について、ナチス・ドイツ(Nazi)が1936年のベルリン五輪で行ったのと同じように、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が大会をプロパガンダの道具に使おうとしているという議員の意見に同意した。

 ジョンソン外相は、「プーチンはアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)が1936年の五輪でやったのと同じ形で、W杯を利用しようとしている」という下院議員の意見に同調し、「ベルリン五輪との比較は的確だと思う」と発言。プーチン大統領が「大会を美化しようとする」と予想した。

 ヒトラーは1936年のベルリン五輪をアーリア人の優秀さを知らしめる大会にしたいと考えていて、陸上競技で4個の金メダルを獲得した米国の黒人選手、ジェシー・オーエンス(Jesse Owens)氏との握手を拒否したことはよく知られている。

 英国とロシアの間では、英国内で起きたロシア人元二重スパイの毒殺未遂事件をきっかけに、非難合戦がエスカレートしている。

 しかし外相は、「さまざまな観点から見て、(イングランド)代表チームを苦しめるのは信じられないほど不当なことだ」と話し、英国政府にW杯をボイコットする考えはないことも強調した。

 両政府の関係は、元二重スパイのロシア人男性が神経剤で攻撃された3月4日の事件から危機的な状況に陥っており、英国が事件の背後にロシア政府がいると非難し、ロシアの外交官23人を国外退去処分にすると、ロシアも同様の報復措置を取った。

 ジョンソン外相は、現地を訪れる英国のファンの安全を確保するよう、ロシアに求めているが、ファンの安全対策を練る予定だった役人をロシアが追放したと話し、「ロシアに行くファンを助ける国の能力という点で、これ以上ない後退だ。問題だし、話し合いを持たなくてはならない」と続けた。外相は、政府がここ数か月、ロシアの警察と連携を取りながら、ファンの安全の確保に全力を注いでいると強調している。

 W杯でグループGに入ったイングランドは、6月18日にボルゴグラード(Volgograd)でチュニジアと対戦。続けて24日にニジニーノブゴロド(Nizhny Novgorod)でパナマと、28日にカリーニングラードでベルギーと対戦する予定になっている。

 2016年にフランスで開催された欧州選手権(UEFA Euro 2016)では、イングランド対ロシア戦を控えたマルセイユ市内や試合の行われたスタジアムで、ファン同士による衝突が起こり、35人が負傷、イングランドのファン2人が重傷になる事件が起こった。(c)AFP/Robin MILLARD