【3月14日 AFP】米国の保健医療支出は、他の富裕国の2倍近くに上るとする研究結果が13日、発表された。主な原因は、薬や医療機器から医師の給与まであらゆるものが他国より高額なためだという。

 米国の医療コストが高い理由は、患者が医師の診察を受ける回数が多すぎるか、保健制度が乱用されているためだと長年考えられてきた。しかし、米ハーバード大学(Harvard University)と英ロンドン大学経済政治学院(LSE)の研究者らによる今回の研究は、この通念に異を唱えている。

 論文の主執筆者で、米ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard University T.H. Chan School of Public Health)のアシシュ・ジャ(Ashish Jha)教授(国際保健学)は「医療コストが他国に比べて大幅に高い理由は誤解されてきた。これらのデータは、米国のこれまでの政策努力の多くが、きちんとした証拠に基づく取り組みではなかったということを示している」と語る。

 米国医師会雑誌(JAMA)に発表された今回の研究では、米国の医療制度を他の高所得国10か国(英国、カナダ、ドイツ、オーストラリア、日本、スウェーデン、フランス、デンマーク、オランダ、スイス)と比較した。調査では、保健医療支出の根拠となる約100の指標について、2013~2016年のデータを使用した。

 米国が「他の富裕国に比べて大幅に医療支出が高く、治療の経過や結果では劣り、また医療の受けやすさでも劣っている」という結果は、専門家らが以前から把握していたことを裏付ける内容だった。

 だが、その理由は、ほぼあらゆるものに関して、米国の方が他国より値段が高いからだった。

 例えば、計画、規制、運営などに関連する運営管理費については、米国では保健医療費全体の8%に相当するのに比べて、他国では1~3%の範囲に収まっている。

 また国民一人当たりの薬剤費支出は、他国では466ドル~939ドル(約5万~10万円)の範囲だったのに比べ、米国ではさらに高く約1443ドル(約15万3600円)だった。中でも広く普及している有名ブランドの薬剤は、価格が他国の2倍近いケースが多かった。

 医師の給与もはるかに高く、一般診療医師の平均給与が、他国では8万6607ドル~15万4126ドル(約920万~約1640万円)なのに対し、米国では21万8173ドル(約2320万円)だった。