【3月7日 AFP】ベルギーで5日、老朽化が進む同国の原子力発電所で事故が発生した場合に備え、国民約1100万人に無料配布するヨウ素錠剤の薬局への配送が始まった。ベルギー政府は、あくまで予防的措置であり「具体的な危険」はないとしている。

 ヨウ素剤には甲状腺への放射性物質の蓄積を抑える働きがある。ベルギー政府は2年前に発表されていたこの計画の実施に当たり、緊急時に取るべき行動を同国の3つの公用語(フランス語、オランダ語、ドイツ語)で説明するウェブサイトも立ち上げた。

 ヤン・ヤンボン(Jan Jambon)内相は、政府の目的は国民に対し「適切に情報を伝える」ことであり、計画は予防的なものだと説明した。

 政府は1箱10錠入りのヨウ素錠剤を450万箱発注。ベルギーの複数の薬局は同国メディアのインタビューに対し、無料配布される錠剤の入荷はすでに始まっていると語った。

 ベルギーの原子力発電所は老朽化が進んでおり、過去数年、潤滑油が漏出したり、原子炉容器にひびが見つかったりするなど問題が相次いだ。人為的な不正操作によって原子炉の運転が停止する事件もあったが、未解決のままとなっている。

 こうした事態を受け、近年、国内のみならず近隣のオランダ、ルクセンブルク、ドイツでも、ベルギーの原発に対する懸念が高まっていた。

 オランダ政府は2年前、ベルギーとの国境近くに住む国民のため数百万錠のヨウ素剤を発注した。

 ベルギーの原発の原子炉は計7基。うち4基は北部のオランダ語地域の主要港、アントワープ(Antwerp)に近いドール(Doel)に、3基は南部のフランス語地域のリエージュ(Liege)にある。(c)AFP