【2月20日 AFP】クウェートでメイドとして働いていたフィリピン人女性が殺害された事件をきっかけに、同国で家事労働をしていた多数の女性たちがフィリピンの首都マニラに相次いで帰国している。彼女のたちの多くは雇用主による虐待や暴力を経験しているが、それでも再び国外で働くリスクを負う覚悟をしている。自国の家族を養う必要性が、時として劣悪な環境やクウェート警察の目をかいくぐりながら生活することの危険性を上回っているからだ。

 富裕国クウェートで5年近く働いたというマリッサ・ダロット(Marissa Dalot)さん(40)は、「雇用主の母親に暴力を振るわれました。厚底の靴で殴られ、体にあざができましたが、それでもとどまりました」と語った。

「子どもたちが学校に通っている間は、帰国せずに働き続けたかったんです」と話すダロットさんは、結局先週末に帰国することに決めた。

 国外で働くフィリピン人労働者は約1000万人。その職業はさまざまだが、中央銀行によると彼らが国に送金した金額は去年だけで計280億ドル(約3兆円)を上回り、フィリピン経済の屋台骨となっている。

 クウェートで家事労働をする人々の環境をめぐる問題は、フィリピン人のジョアンナ・デマフェリス(Joanna Demafelis)さんが遺体となって冷凍庫から発見されたことによって浮き彫りにされた。

 激怒したフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は、アラブ人らは雇ったフィリピン人女性らを日常的にレイプし、毎日21時間働かせ、残飯を食べさせていると非難した。

 クウェートで働くフィリピン人労働者は約25万2000人。多くはメイドとして雇われており、虐待や搾取が横行しているという報告もある。

 ドゥテルテ大統領は、自国民に対して、就労を目的としたクウェートへの渡航を禁止した。すでに同地で就労している労働者を法的に保護する手立ては、現在閣僚らが検討している。また、クウェートからの出国を希望する家事労働者には無料の航空券を手配している。