■「生きていて幸せだ」

 裁判では通訳の助けを借りていたバルトラは爆発直後の様子について、耳鳴りやほかの選手が叫ぶ声が聞こえたことに加え、「まだ攻撃が続くかもしれないと恐れた。腕は出血していて、めまいがした」と生々しく証言。事件の悪夢を語り終えると、法廷で襲撃犯と対面して「パニック」を覚えたことも訴え、「あの襲撃で人生が変わった。生きていて幸せだ」と語った。

 当初は「聖戦(ジハード)」が疑われたものの、事件の10日後には警察が28歳の電気工である同被告を殺人未遂、爆発起動、悪質な傷害など合計28件の容疑で逮捕。被告は欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2016-17)が行われる会場に向けてチームバスがホテルを出発した際、茂みに隠されていた3つの爆発物を遠隔操作で起爆させたとされている。

 被告はまた、ドルトムントの選手と同じホテルに滞在しており、破片爆弾が爆発した現場を目撃していたほか、事件当日にドルトムントの株をプットオプションつきで購入していたという。

 被告の存在が浮かび上がったのは、現場の正面を向いている窓がある部屋を要求していたことに加え、爆発の混乱のなかで落ち着いてレストランに入り、ステーキを注文していたことだったと報じられていた。

 事件の翌日、ドルトムントは延期されていたASモナコ(AS Monaco)との欧州チャンピオンズリーグ準々決勝第1戦に臨んだが敗戦。当時の指揮官であるトーマス・トゥヘル(Thomas Tuchel)監督は、選手がピッチに戻る前に事件の恐怖に対処するための十分な時間を与えられなかったとして、欧州サッカー連盟(UEFA)を批判する事態にも発展した。

 有罪が確定すれば、被告は終身刑に直面することになるが、ドイツでは通常15年後に仮釈放が認められることになっている。(c)AFP