【1月9日 AFP】ドイツ・ブンデスリーガ1部、ボルシア・ドルトムント(Borussia Dortmund)のチームバスが爆弾攻撃を受けた事件で、株価の不正操作で利益を得ようとしていたロシア系ドイツ人のセルゲイ・W(Sergej W)被告が8日、裁判で起訴内容を認めた。「自分の行為を心から悔やんでいる」と話した同被告は、独西部の裁判所に提出した声明で、誰かを殺したり傷つけたりする意図はなかったと主張している。

 昨年4月11日に起きた3回の爆破事件では、ドルトムントのチームバスの窓が割れて飛び散り、スペイン代表のマルク・バルトラ(Marc Bartra)が手首を骨折したほか、警察官が耳の内部を負傷した。検察官によると、3つの破片爆弾にはいずれも過酸化水素の化合物が1キログラム、たばこサイズの鉄のねじが65本ほど含まれており、そのうちの一つがバルトラの座席頭部に当たったとされている。

 当初は「聖戦(ジハード)」が疑われたものの、事件の10日後には警察が28歳の電気工である同被告を殺人未遂、爆発起動、悪質な傷害など合計28件の容疑で逮捕。被告は欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2016-17)が行われる会場に向けてチームバスがホテルを出発した際、茂みに隠されていた3つの爆発物を遠隔操作で起爆させたとされている。

 起訴状によると、被告はこの襲撃によってプットオプションと呼ばれる取引ができるドルトムントの株価を急激に下落させ、利益を得ようともくろんでいたとされている。同被告はまた、ドルトムントの選手と同じホテルに滞在しており、破片爆弾が爆発した現場を目撃していたほか、事件当日にドルトムントの株をプットオプションつきで購入していたという。

 被告の存在が浮かび上がったのは、現場の正面を向いている窓がある部屋を要求していたことに加え、爆発の混乱のなかで落ち着いてレストランに入り、ステーキを注文していたことだったと報じられていた。

 ドルトムントはドイツのサッカークラブで唯一株式が上場しており、実際に株が下落していれば、被告は50万ユーロ(約6700万円)の利益を得られるはずだったものの、襲撃から数日後に売却したところ、もうけはわずか5900ユーロ(約79万円)だったという。

 事件の翌日、ドルトムントは延期されていたASモナコ(AS Monaco)との欧州チャンピオンズリーグ準々決勝第1戦に臨んだが敗戦。当時の指揮官であるトーマス・トゥヘル(Thomas Tuchel)監督は、選手がピッチに戻る前に事件の恐怖に対処するための十分な時間を与えられなかったとして、欧州サッカー連盟(UEFA)を批判する事態にも発展した。

 有罪が確定すれば、被告は終身刑に直面することになるが、ドイツでは通常15年後に仮釈放が認められる。裁判はさらに16日間にわたり開かれる予定となっている。(c)AFP