【1月28日 AFP】タイの首都バンコクでは、風俗店が客の「入浴」用に地下水を違法にくみ上げ、地盤沈下を招いている可能性があるとして、警察が大規模な取り締まりを進めている。

 同地では、マッサージパーラーとよばれる風俗店「ビクトリアズ・シークレット(Victoria's Secret)」に人身売買の疑いで強制捜査が行われ、未成年者を働かせていたことが発覚。合わせて役人らに贈られた賄賂を記した台帳、地下水をくみ上げて水道代の支払いを回避していた証拠などが見つかったことを受けて、今回の取り締まりが行われた。

 環境当局者は、違法な水のくみ上げがチャオプラヤ(Chaophraya)川沿いの低地に広がるバンコク市街の地盤沈下の一因となっていると指摘。今回、浴室数十室を備えた大規模な風俗店であるマッサージパーラー40店舗超が盗水の疑いで捜査を受けている。

 天然資源・環境省の犯罪取締部の副部長は、バンコクの悪名高い歓楽街にあるマッサージパーラー「エンバシー・エンターテイン(Embassy Entertain)の強制捜査を控えて記者会見を行い「店内に入って各部屋の水質検査を実施する」と説明。検査によって合法的な水道水か、違法にくみ上げた地下水か判別できるという。

 専門家らは、主に海面上昇と地下水のくみ上げという要因により、バンコクの一部地域が2030年までに浸水する恐れがあると警鐘を鳴らしている。

 違法な地下水のくみ上げは、バンコクが急速に発展した数十年前に爆発的に増加。ただ近年は、地下水の使用を規制する取り組みが奏功し、ピーク時の1970年代後半には年10センチ前後だった地盤沈下のペースが劇的に鈍化した。

 その一方で風俗業界は、組織的な賄賂や規制の抜け穴を利用して繁盛を続けており、風俗店が未成年者の雇用や人身売買に関与しない限り、警察も目をつぶっている。

 また繁栄する風俗業界から見返りとして役人へ賄賂が渡されているとの疑惑がたびたび浮上するものの、富と地位が強力な盾となる同国では、警察が追及を受けることはめったにない。(c)AFP