【1月25日 AFP】優秀な競走馬から畑ですきを引く農耕馬まで、馬の足の指の数は5本だったとの研究論文が24日、発表された。現代馬は足指が1本だけとする通説を覆す研究結果だという。

 馬やシマウマなどのウマ科動物は、数百万年に及ぶ進化の過程で足の指が段階的に退化して消失し、最終的に先端がひづめになっている巨大な中指だけが残ったと、科学者らの間では長年考えられていた。これは哺乳類の中で他に類を見ない特徴とされている。しかし、英国王立協会(Royal Society)のオンライン科学誌「ロイヤルソサエティー・オープンサイエンス(Royal Society Open Science)」に掲載された論文によると、この説は少なくとも部分的に誤りがあるという。

 論文の主執筆者で、米ニューヨーク工科大学(New York Institute of Technology)のニコス・ソロニアス(Nikos Solounias)教授は、AFPの取材に「今回の研究は、この『消失した』足の指が実際には今なお存在している証拠を提供している」と語った。

「5本の足の指がすべて融合して現在知られているようなひづめを持つコンパクトな前肢を形成するようになった」と、ソロニアス教授は述べ、その形状を決して開かないチューリップの花になぞらえて説明した。

 ソロニアス教授によれば、実体のない複数の指は肉眼では確認できず、骨、化石、胚の動脈などを詳細に調べることで、長い間に消失したと考えられていた足指の痕跡が明らかになったという。

 人や馬や他の哺乳動物が足に5本の指を持つ共通の遠い祖先を持つことは、科学者らの間で意見が一致している。その後、自然環境が亜熱帯林から固い地面の草原に変わる中で、馬は約900万年前までに、足の中指がひづめ上部の長い骨(中手骨)に変化した種が誕生した。

 一部の科学者らは、現代の馬の中手骨の外縁部にある小さな副木骨が2番目と4番目の指の名残であることを認めつつも、小指と親指に相当する1番目と5番目の指は完全に消失したと考えている。だが、現代馬の骨の構造を詳細に調べた結果、副木骨の背面にある突起部が小指と親指に対応していることが判明したと、論文は主張している。

 研究チームは、5500万年にわたる進化の過程で発生したウマ科動物の足の段階的な変形の痕跡をたどり、足指が融合したことを示し、さらに、胎児と成体の馬を詳細に分析することで、足指が1本でなく5本あることと整合する神経血管網の存在を明らかにしている。

「今回の研究は、馬の足の進化が消失ではなく形状変化によって形作られているという新たな理論の枠組みを示唆している」と、ソロニアス教授は話した。(c)AFP/Marlowe HOOD