■HIV患者の出会い系サイトの名簿に群がる治療師たち

 有名な信仰治療師で、「シナゴーグ・チャーチ・オブ・オール・ネーションズ(SCOAN)」を率いる牧師・テレビ説教師のTBジョシュア(TB Joshua)師は、その人気を利用して巨万の富を築いてきた。

 TBジョシュア師はエイズ患者を治療した、死者さえ生き返らせたことがあると豪語する。自身のウェブサイトには同師の「予言の力」に関する証言が列挙され、フェイスブック(Facebook)のページには「祈りでエイズが治った」と題された投稿もある。

 国内のマイナーな学術誌には、HIVの科学的な治療法を発見したと主張する論文も掲載されている。

 ナイジェリアの保健当局は「論理的に正しい科学的エビデンス(根拠)に欠けている」として非難しており、また「患者自身がHIVが治癒したと思っても、体内にはまだウイルスが残っている。感染リスクが高まる」と指摘する専門家の声もある。

 ナイジェリアではHIVの治療に関する本格的な研究は行われてこなかった。しかし、「奇跡の治療」をうたう市場は間違いなく大勢の人々の目にさらされてきた。

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、ナイジェリアの成人のHIV陽性者の割合は2016年に2.9%だった。南アフリカの18.9%に比べれば、比較的低い数字だ。しかしナイジェリアにおけるHIV陽性患者は実際にはアフリカ大陸でも最多とされている。

 HIV患者のための出会い系サイトの創設者エマニュエル・ウゴチュク・マイケル(Emmanuel Ugochukwu Michael)さんは、同サイトには7000人が登録しており、氏名が登録されているデータベースを利用したいという連絡が絶えないと語る。

 マイケルさんは、民間医療を行う伝統医や牧師からたびたび電話があると話す。「彼らは私を食事に招待し、登録者の電話番号を渡せばお金を払うと言ってくる」としながら、「莫大(ばくだい)な金になる。誰もがこのデータベースを利用したがっているんです」と説明した。(c)AFP/Célia LEBUR