■人生のトレーニング

 ビハール州の州都パトナ(Putna)周辺には、ムサハールの少年たちを対象とした全寮制の私立学校「ショシット・サマダーン・ケンドラ(Shoshit Samadhan Kendra)」がある。R.Uカーン(R.U Khan)校長が10年前に開校したときの生徒数はたったの4人だった。今は430人いる。開校前は警察官として働いていたが、ある任務でムサハールの人々の暮らしぶりを目の当たりにし、変化のための行動が必要との考えに至ったのだという。

 ムサハールの人々はどこへ行っても、差別や孤立、極貧状態に直面するとカーン校長は指摘する。「大半は今でも農場労働者としてしか働けず、不作の時には野原でネズミやカタツムリを獲ったり、穀物をあさったりするしかない」と、その厳しい生活環境を説明した。

「この学校では、最初の1か月間で最も基本的事柄を教える。トイレの使い方や体を清潔に保つこと、手洗いや食事の仕方など、個人および社会的なことばかりだ」とカーン校長は言う。通常の教育は、それらが終わってからでないと始まらない。しかし少年たちはひとたびチャンスを与えられれば、生活を向上させるための機会を誇らしげに受け入れる。

 ビハール州のラメシュ・リシデブ(Ramesh Rishidev)福祉相は、ムサハールの人々の生活は向上していると主張する。

 同福祉相は、かつてムサハールの人々は飢えをしのぐためにネズミを食べていたが、今は「そうせざるを得ないからではなく、これまでそうしてきたからとの理由で」食べている人が大半だと説明。「古い世代の中には、他の食べ物と同じようにネズミを食べている人たちもいるが、若い世代の大半は食べない。生活は改善しており、今後もさらに変わるだろう」と続けた。

 しかし、ショシット・サマダーン・ケンドラ学校の生徒の多くは、休暇のため故郷の村に帰るとからかいの的になるという。「村の友人たちが、以前と同じように一緒にネズミを捕ったり食べ物をあさったりしようと誘いにくるとの話はよく聞く。中には、プレッシャーに負けて食べてしまう子たちもいるようだ」とカーン校長は語った。(c)AFP/Bhuvan BAGGA