【12月22日 CNS】地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」から米国が離脱し、世界の気候変動対策に大きな打撃を与えている状況下、中国政府は19日、CO2排出量取引市場を設立したと発表した。これによって今後、CO2排出削減の堅実な発展を促すことで、世界の気候変動問題にカンフル剤を注入する。

 清華大学(Tsinghua University)エネルギー環境経済研究所、張希良(Zhang Xiliang)所長は、「中国は経済大国となり、エネルギー多消費型産業の比重が高くなった。そのため気候変動に対応する任務は極めて困難だった。このCO2排出量取引の全国市場を設立させた目的は、市場手段に基づき、できる限り低コストで気候変動における国際的な承認事項を実行し、国内の制限するCO2排出削減の目標を実現することにある」と説明する。

 中国のCO2排出量取引市場は現段階では電力業界から始動し、徐々に広がりつつあるが、まだ全産業は網羅していない。「電力業界が率先して全国の排出量取引市場を始動させたことは、排出量取引システムを構築するひとつの突破口になる。将来的にほかの業界へ徐々に広がり、今後、石油化学、化学工業、鉄鋼、製紙、航空など業界にも波及していくことになるだろう」と張所長は指摘する。

 上述の業界で、CO2排出量年間1万トン以上の企業は約7000社あると言われ、これらの企業の総排出量の75%以上を工業部門が占めていると考えられる。張所長は、「この企業の大部分を取り締まることが、CO2排出量全体の削減につながる」と強調する。

 一方、中国電力企業連合会(China Electricity Council)、王志軒(Wang Zhixuan)副理事長は「何もないところから新しい市場を作り出すには、相応する市場とのマッチングを進めていかなくてはならない」と指摘する。CO2排出市場は取引を中心に、割当の分配、排出量の算定、市場の監督などが主な要素になり、とりわけCO2排出の総量と割当の分配が極めて重要になる。

 総排出量について、清華大学エネルギー環境経済研究所の張所長は、取引システムにおける総排出量の設定自体が極めて難しい作業にとなると指摘する。「総排出量を設定するには、まずCO2排出市場が網羅する範囲の特徴を考慮しなくてはならないし、異なる国の定めた削減目標や排出取引システムに対し、期待値を把握する必要性もある。さらに、将来的な経済成長率と業界の成長状況にも一定の予測をしなければならない。また、産業や企業の競争力、リスク対応力なども考慮していかなくてはならない」と説明している。

 以前、欧州連合(EU)諸国が実施した取引市場では総排出量の設定が緩過ぎて失敗し、その後の石炭価格の低下や有名無実な市場を作る結果にもなっている。そのため、業界関係者の予測では、中国CO2排出量取引市場の総排出量は厳しく管理されるとみられている。(c)CNS/JCM/AFPBB News