【12月20日 AFP】遺品整理を行う「あんしんネット」の大島英充(Hidemitsu Ohshima)さんが足を踏み入れた東京の小さなアパートの一室は、蒸し暑い中で腐敗した肉の悪臭に満たされていた。そこには男性の遺体が3週間横たわっていたのだ。

 死亡時に50歳代だったとみられるこの男性は、高齢化する日本で増加する「孤独死」の犠牲者の一人だ。1000万人を超える人々が暮らすこの大都会で誰にも気付かれずに彼は独りで死んだのだ。

 白い防護服を着用してゴム手袋をはめた大島さんが、死亡した男性の体液でずぶぬれになった布団のマットレスを持ち上げると、その下には大量のうじ虫と黒い虫がうごめいていた。

「ひどい時は防護服を着用します。知らない虫がいるときもありますし。自分を守るために」と大島さんは言う。

 孤独死は日本で深刻化している問題だ。人口の27.7%が65歳以上となっている日本では、中年になるとパートナーを探すことを諦め、一人で生きていくと選択する人が多い。専門家は日本特有の文化的、社会的、そして人口動態的要因が絡み合い、問題を悪化させていると言う。

■孤独な死

 たった独りで死を迎え、何日もあるいは何週間も気付かれずにいる人の数について公的な統計はない。だが専門家らは、その数を全国で年間約3万人と推定している。

「あんしんネット」の事業を行っているリサイクル会社アールキューブ(R-CUBE)の石見良教(Yoshinori Ishimi)事業部長は、年間3万人という推定はデータが取られた範囲の人数だと指摘し、「おそらく、予測できるのは、この2~3倍の人数が孤独死しているのではないかと思っています」と語った。

 日本は過去数十年間に、広範囲に及ぶ文化的・経済的変化を遂げた。だが人口統計学者は、この国では社会的セーフティーネットが変化に追いつかず、高齢者の世話をいまだに家族が担っていると指摘する。