■異常気象

 科学者らによると、最も切迫した問題は2つあるという。一つはデンマーク領グリーンランド(Greenland)の氷床の融解、もう一つは北極の気温と海水温の上昇だ。

「グリーンランドの氷床融解は、壊滅的な海面上昇を引き起こす恐れがある。一方の北極で起きている全体的な温暖化は、天候パターンに影響を与え、異常気象事象の一因となるジェット気流を乱す」とマシス氏は説明した。

 また、異例の急激な寒波、米西部の干ばつ、メキシコ湾岸(Gulf Coast)地帯のハリケーンなどは全て北極の海氷融解の影響を受けていると考えられるとされ、「モデル結果や現在得られている一部の限られた観測結果から、北極圏における温暖化および海氷消失と北米全域における異常気象事象の頻発との間に何らかの関連性が存在することが確認されつつある」とされた。

 そして世界の気象現象に北極がどのように影響を及ぼしているのかを理解するには、さらなる研究が必要であることを認めながら、「現在起きている温暖化と海氷消失は、それに起因する異常気象事象が北米でさらに多く発生し始める条件を作り出している」と指摘した。

 北極圏報告カードの発行は今回で12年目で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の就任以降で初となる。トランプ大統領は、2015年に採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」からの米国の離脱を表明しており、地球温暖化は中国のでっち上げだと主張している。

 NOAAのティム・ガロデット(Tim Gallaudet)長官代理は記者会見で、気候変動に対抗するための米政府の措置を米国民が信頼するべきかどうかとの質問を受けた。

 この質問に対しガロデット氏は「国民はわれわれ、NOAAとそれを運営する国に対して高い信頼を置くべきだ。なぜならわれわれは、より的確な情報を国民と政府に提供するために、世界各地や北極圏の変化について報告し続けているからだ。この北極圏報告カードもその一例だ」と答えた。(c)AFP/Kerry SHERIDAN