【12月11日 AFP】ベルギーとの国境に近い北フランスの町イスベルグ(Isbergues)に住むマリールイーズ・ウィルト(Marie-Louise Wirth)さんは、100歳でなお現役のバー経営者だ。地元の人々からは「マリールー」の愛称で親しまれている。同年代の常連客の多くが他界してしまった今も、その心に引退の二文字が浮かぶことはない。

 レンガの壁、窓にはレースのカーテン、カウンターはアールデコ調。「50年前からずっとこんな感じ」と語るマリールーさんには、店を現代風に改装する理由もほぼ見当たらない。1931年、14歳で当時父親が経営していたこのバーを手伝い始めたときと同じカウンターを今も拭いている。

 すらりとした長身に青い瞳をしたマリールーさん。白髪をショートカットにし、素顔に赤い口紅だけを塗った快活なおばあさんだ。「ビールサーバーやコーヒーマシンがないって、みんな驚くの。でも、彼らは知らないだけ。昔はビールサーバーもコーヒーマシンもなかったんだから」

 わずか20平方メートルほどの小さなバーには、名前がない。「おいしいビールがあれば、名前なんか必要ないでしょう」とマリールーさんは言い切る。インターネットや携帯電話、クレジットカードにも必要性を感じていない。

 ずっと独身で子どももいないマリールーさんがこの店を継いだのは、父親が亡くなった1954年、37歳のときだった。開店は毎朝8時15分。1人目の来店客と一緒にグラス1杯のチェリーブランデーをすするのが、マリールーさんの日課だ。

 はつらつとして人情味あふれるマリールーさんは、自分のことを「ちょっとした知りたがり屋」だと言うが、長生きの秘訣(ひけつ)は分からないという。「私がなぜこんなふうかなんて、どうして私に分かると思うの? 神様だけが知っていることだけど、神様は教えてくれないもの!」

 少なくとも、食習慣にヒントはなさそうだ。「辛い物をたくさん食べるの。食べないほうが良いものばかり食べてる。マヨネーズとジャム、どっちって聞かれたらマヨネーズを選ぶ。でも、コレステロール値は全然高くないの」

 では、運動はどうだろう? ──こんな答えが返ってきた。「私はね、60歳の人と同じような生活をしているの。よく出かけるし、ダンスに行くのが好き。午前2時に帰宅して、朝7時半に起きるのだって平気。疲れ知らずなのね」

 常連客は減りつつあるが、マリールーさんは続けられる限り店を開け続けると決めている。(c)AFP/Benjamin MASSOT