【11月20日 AFP】中国当局は19日、北京南部で出稼ぎ労働者など低所得者が多く住む居住区画から出火し19人が死亡した火災について、調査を開始したと発表した。出火元の下宿の近隣では同日、同様の低家賃の住居ビルの取り壊しが始まり、大勢の住民たちが避難を余儀なくされている。

 18日夜に発生した火災の原因は、市当局の声明によると現在も分かっていないという。

 現場は、家賃が安く、中国内陸部からの出稼ぎ労働者らが多く住む大興(Daxing)区の新建(Xinjian)村。工場と住居が一体となった粗末なコンクリートの建物が密集している。住民らによると建物の多くは不法に建設され、数か月以内に取り壊される予定だった。

 目撃者がAFPに語ったところによると、火元となった下宿は衣類工場に併設された建物内にあったという。

 大興区の広報担当者は、「火災の原因特定に向けて調査を行っている。火災の責任者は法的責任を負うことになる」と述べた。市当局は既に不特定多数の容疑者の身柄を拘束したと明らかにしている。

 人口過密状態の北京では市当局が「美化運動」として景観を損なう屋台や店を一掃し、市中心部から出稼ぎ労働者たちを追いやっている。居場所を失った労働者たちは、新建村など市郊外の低家賃地区に落ち着くことが多い。しかし、北京の蔡奇(Cai Qi)市長は市内の全ての村で安全検査を行い、違法な工場は閉鎖するよう指示。新建村でも市の当局者が見回って、店舗や屋台、アパートの多くに閉鎖・移転を命じていた。

 火災現場の近くでは19日、重機6台による建物の取り壊しが始まり、立ち退きを通告された大勢の住民が家財道具を運び出した。ある男性は、夜勤明けで寝ている間に自宅アパートの取り壊しが始まったと語り、「石が部屋のドアを突き破って飛び込んできて、ベッドから逃げ出した」「地震のようだった」と話した。部屋を出ると、がれきが廊下を覆い尽くしていたという。

 他の住民らによると、立ち退きを通告されたのは19日朝だったという。(c)AFP/Ryan MCMORROW