【11月7日 AFP】米アップル(Apple)は租税回避に対する摘発が迫ると、欧州のタックスヘイブン(租税回避地)であるアイルランドに集めていた海外所得の大半を別のタックスヘイブンに動かしていた──。桁外れの利益をたたき出すITの巨人のそんな租税戦略を、米英の有力メディアが6日、新たに膨大に流出した資料、通称「パラダイス文書(Paradise Papers)」を基に暴露した。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)と英BBCはパラダイス文書の分析から、アップルが2013年、適正に納税していると公の場で述べた後に、課税を免れている米国外の現金の大部分を、タックスヘイブンの英領チャネル諸島(Channel Islands)ジャージー(Jersey)島に動かしていたと報じた。

 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が提携メディア各社と共有したパラダイス文書は、富と権力を持つ人や組織が用いている租税回避法の内幕を明らかにしている。

 米カリフォルニア(California)州に本社があるアップルは2014年以前、税法を有利に活用して、米国外で得た所得をアイルランドの子会社に集めるなどして納税額を最小限に抑えていた。

 しかし、「ダブルアイリッシュ」と呼ばれるこうした節税手法に対して米欧から圧力がかかるようになると、アップルは税務当局の手が届かない新たな現金移動先を探すようオフショア金融専門の法律事務所「アップルビー(Appleby)」に依頼。結果、外国企業に対する税率がゼロのジャージー島が選ばれたという。

 アップルビーは、パラダイス文書の大半の流出元と報じられている。

 欧州連合(EU)は、アイルランドがアップルに適用している優遇措置が違法な補助金に当たるとみて、アップルに対して約145億ドル(約1兆6500億円)の追徴課税を命じている。(c)AFP