■米カンザス州のある学区では購入を見送り

 米カンザス(Kansas)州のある学区では先月、「George」が若年層の読者には不適切だとして、区内の学校用には購入しないことを決定した。この決定を受けて、性的マイノリティーを自称するジーノ氏は、すぐさまツイッター(Twitter)で同学区内にある全学校の図書室にこの本を配布するための募金運動を開始。すると開始30分で必要な資金が集まった。

 ジーノ氏はAFPの取材に「トランスジェンダーの人を描いた物語を子どもたちに与えることは、トランスジェンダーの文化を受け入れるための鍵となる。思いやりを持つための適切な年齢などない」と語った。

 先駆的な役割を果たすこうした物語が提示する複雑なテーマは、これまで常に批評家らにとっての心配事となってきたとバルドラ氏は話す。果たしてそれが若年の読者に「適切か」「危険ではないのか」との懸念だ。

 バルドラ氏はこの問題を取り巻く今日の状況について、1980年代に同性愛の主人公が青少年向けの作品に登場し始めた頃の状況と重なると指摘する。そして「こうした本は文学的なクオリティーにおいて判断されるべきで、子どもたち自身に読むどうかを決める機会を与えるのがいい」と付け加えた。

 しかしドイツのある文学批評家は、このアプローチに懐疑的だ。「間違った体で生きることについて、どう感じるかを語りたいのだとしたら、それは幼い読者に多大な内省を要求することになる」とAFPの取材に語った。

 伝統的な男女の役割を覆す物語はずっと以前からあった。バルドラ氏によると、そうした作品はその時代精神により数年ごとにピークを迎えるが、「今はたくさんの良い本がある時」なのだという。(c)AFP/Michelle FITZPATRICK