【10月1日 AFP】ミャンマー西部ラカイン(Rakhine)州のイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)の武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」の指導者アタ・ウラー(Ata Ullah)氏は、敵から見れば、ミャンマー治安部隊を相手に戦いを挑み数十万人のロヒンギャに計り知れない苦しみを与えている向こう見ずな素人だ。

 一方、ARSAの支持者にとってウラー氏は、サウジアラビアでのぜいたくな生活を捨て、国を持たないロヒンギャを守るため圧倒的に不利な戦いに挑んでいる大胆不敵な戦士だ。

 ミャンマーを拠点に活動している独立系アナリストのリチャード・ホーシー(Richard Horsey)氏は「彼には非常にカリスマ性がある」とAFPに語った。「(ロヒンギャの)コミュニティーが感じている不満に共鳴するような発言をしている」

 ウラー氏は8月にミャンマー西部ラカイン州で起きたARSAによる襲撃事件を命じたとされている。死者も出たこの事件を受けて治安部隊は激しい掃討作戦を開始し、その影響で50万人を超えるロヒンギャ難民が隣国バングラデシュに脱出した。

 ウラー氏が最初に注目を集めたのは昨年10月。イスラム教徒と仏教徒の宗教対立が長年くすぶっているラカイン州の国境検問所で待ち伏せ攻撃事件が発生して死者が出た後、ウラー氏がARSAの同州での活動開始を宣言する動画がインターネット上に投稿された時だ。

 ウラー氏に近い複数の関係者がAFPに語ったところによると、ウラー氏の年齢は30代前半で、末端組織を寄せ集めたネットワークを監督しているもようだ。こうした末端組織は簡単な軍事訓練を受けたメンバーで構成され、棒やなた、わずかな銃で武装しているという。