【9月28日 AFP】「ディオール(Dior)」のデザイナー、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が26日、すべての女性がモデルになれるわけではない、と語った。それは、太った女性像で知られるフェミニストのアーティスト、ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle)にインスパイアされたというショーを披露した後のことだった。

(c)AFP/FRANCOIS GUILLOT

 イタリア人デザイナーのキウリは、昨年このフランスのクチュールメゾンに女性初のヘッドデザイナーに就任以来、フェミニストとして広く知られてきた。パリで発表されたばかりの18年春夏コレクションでは「なぜ素晴らしい女性アーティストは生まれなかったのか?(Why Have There Been No Great Women Artists?)」というメッセージが書かれたブルターニュ風ニットが登場。サンファルの原始的な色合いやピンクやイエローがはじけるショーの幕開けをその反語的なメッセージが飾った。

 しかし今回のショーでは、肉感的な「ナナ(Nana)」と呼ばれる彫像によって女性の丸い体形を讃えた、偉大なフランス系アメリカ人アーティストへのオマージュとして、大柄なモデルを起用するまでには至らなかった。痩せすぎモデルの起用を禁止したパリのキャットウォークの新たな宣言を称賛しつつ、「すべての少女がモデルになれるわけではない」とキウリはAFPに語った。

「私は女性で、娘もいるので、素晴らしいアイデアだと思う。しかし同時にすべての人がモデルになれるわけではないことは説明しなくてはならない」。このキウリの発言は、ニューヨーク・ファッションウィーク(New York Fashion Week)でアシュリー・グラハム(Ashley Graham)をはじめとするプラスサイズモデルたちがメディアで大きく取り上げられた、たった2週間後の出来事だった。「今やみんな、すべてを欲しがりがちだ。だが歌手になりたいのなら、歌唱力がなくてはならない。登山家になりたいのなら、運動神経が発達してなくてはならない。何か具体的なものが必要だ」とキウリは語る。

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■「これは仕事なのだから」

「拒食症の少女たちを起用したくはない。これが仕事だということを、人々はよく忘れてしまう」。世間はしばしばデザイナーたちに関して間違った考えを抱くと、キウリは主張する。「我々はサイズ37のマネキンを使用して制作する。我々がサイズ40のマネキンで制作しないのは、後で他のサイズを生産することが難しくなるからだ。最初のプロトタイプを作るのに適した、サイズがいくつかある。だから我々は、生まれつきそのサイズを持った才能ある少女たちを求める」

 同日、「ディオール」の前には、若きフレンチブランド「ジョルネ(JOUR/NÉ)」が、パリのキャットウォークで「曲線的な女性」、つまりプラスサイズモデルを起用した。「コカ・コーラ(Coca-Cola)」のロゴを服に取り入れたことで人々を驚かせたこのブランドは、ショーの後、「我々はモデルたちを分類したくない」とAFPに語った。

 キウリは「個性がある」モデルを好むと語る。「ルース・ベル(Ruth Bell)が好きなのは彼女が強い個性を持っているから。あなたもそれを感じられると思う」

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■「私たちはみんなフェミニストになるべき」

 キウリはミラーのモザイクをあしらった、巨大で壮大な洞穴を「ディオール」のショーのために制作した。それはサンファルがハンブルク(Hamburg)とイタリア(Italy)に作った同様の作品を鑑みたものだ。キウリは「私たちはみんなフェミニストになるべき(We should all be feminists)」というスローガン付きのTシャツを、「ディオール」の主権を握ってすぐに発表した。そして最新のコレクションでは「なぜ素晴らしい女性アーティストは生まれなかったのか?」の一行を、アメリカ人フェミニストで歴史家のリンダ・ノックリン(Linda Nochlin)のエッセイから引用した。

 モデルたちのサイズ問題は、激しい議論を呼ぶ。多くの批評家たちが、ファッションは不健康であり得ない美の理想を、若い女性たちに見せていると指摘する。プラスサイズモデルのアシュリー・グラハムは、カナダのランジェリーブランド「アディション・エル(Addition Elle)」のショーに登場したとき、熱狂的な歓迎を受けた。さらに大柄なモデルであるキャンディス・ハフィン(Candice Huffine)やプレシャス・リー(Precious Lee)、サビーナ・カールソン(Sabina Karlsson)らも他のトップショーでフィーチャーされた。

 今月初め、フランスのファッション界の2つの巨頭である「モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)」と「ケリング(Kering)」が、彼らのキャットウォークにおいて、痩せすぎモデルと若すぎるモデルの起用を禁ずると表明した。現在、モデルは16歳以上でサイズ34(UKサイズ6、USサイズ0)以上でなくてはならないとされる。今年初め、とても痩せたモデルによる「ポルノ・シック」なポーズの広告キャンペーンが、フランスの広告規制当局によって批判された「ケリング」が所有する「サンローラン(Saint Laurent)」も、この日遅くに春夏コレクションを発表した。(c)AFP/Fiachra GIBBONS