■水爆を上回る

 AIMプロジェクトの撤退をめぐりジョンズ・ホプキンス大学のチェン氏は、他の大半の自然災害とは異なり、小惑星衝突は「世界による防御が可能な事象だ。人間の力で何かができるのだ」と語気を強める。

 2013年、ロシア・シベリア(Siberia)上空の大気圏で小惑星が爆発し、約1600人が負傷する出来事があった。

 AIDA計画で標的となるディディモスの衛星ディディムーン(Didymoon)は、大きさの点ではこれよりはるかに危険度が高い部類に入る。

 ディディムーンは幅約160メートルで、この大きさの天体が地球に衝突する際のエネルギーは400メガトンの爆弾に相当する。その規模についてチェン氏は、「最大級の水爆を上回る」と説明した。

 リガの科学会議に出席した欧州の科学者らは今回、AIMの代替案として、その内容を見直し、予算を抑制させた新たな計画案を提示した。

 新しいAIM計画案は、搭載機器が1台のカメラと小型衛星だけと大きく削減され、ディディムーンの内部構造を調べるための着陸機とレーダーは搭載しない見通しだ。

 欧州担当プロジェクトの科学部門を率いるパトリック・ミシェル(Patrick Michel)氏は新予算案について問われ、約2億1000万ユーロ(約280億円)と答えた。

 そして当然ながら、計画に遅れが生じるのは避けられない。米航空宇宙局(NASA)は、ディディムーンへの宇宙機衝突の実施を2022年に計画している。

 欧州宇宙機関(ESA)のヤン・ボルナー(Jan Woerner)事務局長はAFPの取材に、2019年開催予定の次の閣僚会議で「新案を推す方針」を明らかにした。

 ボルナー局長は、取材に応じた電子メールで「小惑星の進路をそらすための手段をすぐにも手にすることが、一生物種としての人類にとって重要になる。(天体衝突が)遅かれ早かれ起きることは分かっている。もし起きたらの問題ではなく、いつ起きるかの問題なのだ」と述べた。