AFP記者が見た日本、おもてなしと利便性の「コンビニエンスランド」
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■完璧さの裏には…
外食する際にも優れた合理性や利便性を目にすることができる。
多くのレストランの店頭に置かれた本物そっくりな食品サンプルもその一つ。注文に困った外国人観光客はこれを指さすだけで済む。
券売機を導入している店では、注文そのものも実にスピーディーだ。入店前のオーダーはかなりの時間短縮となる。
テーブルに着くとすぐにおしぼりが出てくる。しかも、季節に応じて暖かかったり冷えていたりと細かい気配りがなされている。また、荷物入れのバスケットが用意されている場合は、ハンドバッグを直接床に置いて汚す心配がない。入店後しばらく経っても氷水が出てこないようなケースは、よほどの事情があると思っていいだろう。
合理性は移動中にも見ることができる。例えば、駅。これ以上ないほど混雑している時でさえ秩序は保たれており、運行にもほぼ乱れがない。
大抵の利用客はきちんと整列して列車の到着を待っている。時刻表通りに次の列車がすぐに来るので、大慌てする必要はない。
長旅でもストレスフリーだ。宅配サービスを使えば、わずかな料金で荷物を目的地まで運んでくれる。
手荷物から解放され、穏やかな気持ちで新幹線のホームへと向かうと、今度は足下の目印に気が付いた。これが目安となり、列を作って列車の到着を待つことができるシステムとなっているのだ。車内の座席は180度回転可能で「時速300キロの景色」を最大限堪能できる。
在日40年の社会学者、ミュリエル・ジョリベ(Muriel Jolivet)氏は、日本では快適さと実用性が最重要視されており、とてもプラグマティックだと話す。
良く知られているのは、斬新な便利グッズが数多くあることだろう。横になっても本が読め、うたた寝しても平気なブックピローや、夏の暑い日に使える扇風機付きのシャツ、冬向けのポケットヒーターもある。
こういった便利グッズについて渡辺氏は、同じようなものは昔からあったと語り、日本では新たなコンセプトをゼロから生み出すよりも、既存の製品をさらに良いものにすることに長けていると説明する。
では、これら社会的な配慮や利便性を考慮すると、日本ほど住むのに完璧な国はないと言えるのだろうか? 恐らくそうは言い切れない。この国には守るべきルールがとにかく多い。それぞれが思い思いに行動することが難しいといった側面もあると、渡辺氏は認める。
ジョリベ氏も同様の意見だ。日本に見られる「完璧さ」は無償ではないとしながら、「その裏には融通の利かなさもある。失敗は容認されない」と、その一方に存在する厳しさに触れた。(c)AFP/Anne BEADE