■「教育目的」と称して捕獲

 ロシアの海洋哺乳類審議会(Marine Mammal Council)のドミトリー・グラゾフ(Dmitry Glazov)副議長によると、ロシア政府は動物園・水族館用として業者らに年間でシャチ10頭、シロイルカ150頭ほどの捕獲を許可している。

 とりわけ、1頭あたり100万ドル(約1億1000万円)以上の価値があるシャチをめぐっては、その捕獲許可取得への需要が高い。

 これらの数字は、そう大きなものではないように思えるかもしれないが、活動家らは実際の数字がもっと大きいと考えている。教育・研究目的として捕獲された個体が商用目的で輸出されているためだ。

 シャチもシロイルカも世界的には絶滅危惧種とはみなされていない。しかし、ロシアの研究者らは取引の監視と最新の研究が不十分なことから、領海内にどれだけの個多数が残っているのかは見当もつかないと言う。

 グラゾフ氏は「海洋哺乳類の多くの種はその生息数さえ明らかになっていない。旧ソ連時代から研究が行われてこなかった」と指摘する。

 同氏によると、2010年に行われたおおまかな個体数調査によって、ロシア極東のシロイルカは2つの群れに分かれており、それぞれの群れから年に15頭以上捕獲すると群れを維持できなくなると推測されている。

 しかし現状では、捕獲業者らはオホーツク海(Sea of Okhotsk)に生息する片方の群ればかりを狙い、若い雌を中心に1シーズン中80頭ほどを捕獲している。若い雌は、群れの個体数維持に最も重要な存在だ。

 さらに、表向きは「商業目的」ではなく「教育目的」で捕獲されていたことから、政府はシロイルカの販売から税金を一切徴収できていないことも指摘された。グラゾフ氏によると、こうした問題が表面化したことから、非公式ではあるが生体捕獲は2016年に中止された。しかし、今年に入ってからは、政府は生体捕獲を再び許しているという。