チベット医学、代替医療として脚光 「患者に寄り添う」術、効果のほどは?
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【8月17日 AFP】インドのヒマラヤ(Himalayas)山麓で夜明け前、チベット人の僧イシェ・ドンデン(Yeshi Dhonden)師に診てもらおうと、大勢の患者たちが尿の入った小瓶を手に辛抱強く並んでいる。ドンデン師は、チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世かかりつけの療法家として有名になった人物である。
「病気の人がやって来れば、診てあげるのです」。ダラムサラ(Dharamsala)郊外のマクロードガンジ(McLeodganj)に個人で開いている診療所で、周りをチベットの巻物や高名な患者の肖像に囲まれたドンデン師は語る。
チベット医学、チベット語で「ソワリッパ」は、病気を治すのに瀉血(しゃけつ)やお灸(きゅう)、吸角(きゅうかく)など古来からある術を用いる。独自の理論や治療法に加えて、中国医学、インド医学「アーユルベーダ」の一部も取り込んでおり、瞑想や仏教の祈りなど精神療法も重視する。
今では世界各地に信奉者がおり、腰痛からがん、変性疾患まで、さまざまな病気の患者が望みを託している。
ドンデン師は患者の手首に軽く手を当てて、主要な臓器の状態や血圧を確認する。そして、白い磁器に入れられた尿を2本の小さな竹棒でかき回し、色や泡のでき方、沈殿物、においを基に診断を下す。
「レントゲン検査のようなものはしません。自分自身が頼りです。脈をとって、尿を診る。これだけです」。チベットの精神的指導者であるダライ・ラマ14世の健康を30年にわたって預かってきたドンデン師は言う。
信奉者はチベット医学は本当に効くと言う。とはいえ、効果に関する科学的な研究はほとんど行われていないのが実情だ。