■患者に寄り添う医学

 代替医療としてのチベット医学への関心が広まった背景には、チベット人が世界各地に離散している状況に加え、欧米で仏教の人気が高まったこともある。

 だが、東洋医学の例に漏れず、近代医学の立場からは懐疑的にみられている。

 インド公衆衛生基金(PHFI)の心臓専門医、D・プラバカラン(D. Prabhakaran)氏は、チベット医学は標準化されておらず、臨床試験もないため、広く受け入れられるには時間がかかるだろうと語っている。

 とはいえ懐疑的な人も、特定のケースではチベット医学が有効とみられる患者がいることを認めている。

 プラバカラン氏は「終末期の患者がチベット医学による治療を受けた後に、予想よりもかなり長く生きられたという話を聞いたことがある」と語る。

「チベット医学は患者の気持ちに寄り添うものなのだと思います。基本的にそれは仏教の教えから来ており、人気を集めている理由もその辺りに事情があるのでしょう」

 2010年、インドはチベット医学を正式に「癒しの科学」として認め、国の医療制度に組み入れた。これにより、研究と投資が促進されることになった。(c)AFP/Abhaya SRIVASTAVA