【8月9日 AFP】延命効果ホルモンとして働くたんぱく質「クロトー(klotho)」の少量投与で、神経変性疾患における認知的機能の改善につながる可能性があるとする研究論文が9日、発表された。

 米科学誌セル・リポーツ(Cell Reports)に掲載された研究論文によると、老化または障害のあるマウスの認知および身体的機能を向上さる効果が、クロトーたんぱく質において確認できたという。研究は、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)の研究者らが行った。

 先行研究では、高レベルのクロトーに生涯さらされることで精神的機能の向上につながることが分かっていた。だが、クロトーの短期投与による認知的機能の急速な改善については、これまで明らかになっていなかった。

 今回の研究では、4日連続でクロトーを投与した若いマウスに著しい認知的機能の向上が見て取れた。効果は2週間以上続いた。老齢のマウスでは、1回の投与から2日後に改善が見られた。他方で神経変性病の兆候を示しているマウスでは、数日間の投与で症状が軽減した。

 研究者らは、「今回の発見は、少量のクロトーによる治療は脳の機能を生涯にわたって強化し、アルツハイマーやパーキンソン病のような神経変性病に対する脳の抵抗力を向上させる新しい治療戦略となる可能性があることを示唆している」と述べている。ただ、人への投与をめぐっては、その安全性および有効性を判断するためにさらなる試験が必要とした。(c)AFP