【8月8日 CNS】「キャッシュレスウィーク」が到来した! 中国IT大手のテンセント(Tencent)傘下のスマホ決済サービス「ウィチャットペイ(WeChat Pay)」とアリババ・グループ・ホールディング(Alibaba Group Holding)傘下のオンライン決済サービス「アリペイ(Alipay)」が1日、スマホ決済利用時の報奨金キャンペーンなど大々的なキャンペーンをスタートさせた。

 なかでもアリペイの力の入れようは顕著で、2元(約32円)以上の決済で最大4888元(約8万59円)の報奨金がもらえるキャンペーンを実施した。また、アップル社(Apple)の「アップルペイ(Apple Pay)」は、前月からすでに顧客に最低5割引キャンペーンを実施しており、一歩先んじていた。

 アリペイなど第三者支払機関のプラットフォームが日増しに普及しているなかで、「キャッシュレス社会」は、遠い未来のことではないのかもしれない。以前報道した中国系カンボジア留学生の話でも、「昨今、煎餅(中国式クレープ)を売るおばちゃんですらアリペイアカウントを持っている」。しかし、同時に多くの年長者から「アリペイを聞いたことがない」「ウィチャットペイの使い方が分からない」との声も聞く。このような両極化する現在、アリペイなど第三者支払機関が望む「キャッシュレス社会」はただの「ひとりよがりな考え」になってしまうのだろうか?

 ウィチャットペイの「2017年キャッシュレスデー」スタート前日の7月31日、運営会社のテンセントは、毎年8月に巨額資金を投入し、報奨金や金券、お年玉などの消費者還元キャンペーンを実施すると発表した。

 これに対し、アリペイも負けていない。アリペイは8月1日から1週間、全国のアリペイユーザーがお店で2元(約32円)以上の決済をすれば、報奨金がもらえるチャンスがあり、最高金額は4888元(約8万59円)にもなるとアピールした。

 また、アップルは前月に一度、アップルペイのキャンペーン活動を先駆けて実施している。7月18日から24日の間、銀聯(China UnionPay)の決済サービス「雲閃付(QuickPass)」の表記がある利用対象店で、消費者がアップルペイ決済をすれば、最低でも5割引のサービスと50%を超えるクレジットカードのポイント還元のキャンペーンを実施していた。

 IT情報・コンサルティング企業の易観(Analysys)のデータによると、中国第三者支払機関のモバイル市場での取引規模は、2017年度第1四半期で18万8000億元(約309億円)に達し、前期と比べて47%増加している。そのなかでもアリペイとテンセントの2社で93.21%の市場シェアを占め、中国モバイル決済市場の絶対的な位置に君臨している。

 この2社の勝敗の行方がとりわけ大きな鍵を握っている。両社が巨額資金を投じて打ち出してきた「報奨金戦略」は、今に始まったことではない。タクシーのモバイル配車サービスやシェア自転車事業など、常に同じ道筋をたどってきている。

 両社がユーザーの争奪戦と市場を独占している背景には、あたかも一緒に申し合わせたかのように、この「キャッシュレス決済」を推進してきたからだ。「キャッシュレス社会はまだ未来のことだが、その未来は今まさに到来している」。アリペイは今年初め、対外向けに5年の歳月をかけて、中国をキャッシュレス社会の先進国として推進していきたいと宣言している。

 この「キャッシュレス」という概念に関して、アリペイでは「伝統的な金融機関であろうが第三者支払機関であろうが、話題としてよく挙がる案件。当初から強調しているが、これは現金の消滅を意味するものではない。現金支払い以外に支払方法の選択幅が増えた、ということを意味するものであって、その選択権はユーザーと消費者にある」
同様にウィチャットペイも、「『キャッシュレスデー』を提唱したのは、現金を消滅させる為のものではなく、エコロジーや流行、効率性の高い生活理念を普及させるためであり、現金支払いに対する新たな補完なのである」としている。

 昨今、大型スーパーであろうと商店街のようなお店であっても、至る所でウィチャットペイやアリペイのQRコードが貼られているのを目にする。現金を持たずに出かけるのも、すでに若い人の習慣になっている。しかし軽視できないのは、客観的な制約条件も含めて、年配者や子供など、中国にはまだまだ第三者支払アプリを使用して支払いができない人たちがたくさんいるということだ。これが「キャシュレス社会」の実現のための高い敷居になっているのは間違いない。

 アリペイやウィチャットペイが提唱する「キャッシュレス社会」。はたまた独りよがりな概念で終わってしまうのだろうか?(c)CNS/JCM/AFPBB News