【7月19日 AFP】(写真追加)2015年に子どもとしては世界初の両手の移植手術を受けた米国の男の子が、自分で書いたり食事をとったり、服を着たりできるようになった。担当医師らが18日、専門誌に掲載された論文で明らかにした。術後の経過を踏まえ、この画期的な手術は「成功」を収めていると説明している。

 男の子はザイオン・ハービー(Zion Harvey)君(10)。2歳の時に敗血症のため両手両足を切断し、腎臓の移植手術も受けた。2015年7月に米フィラデルフィア小児病院(Children's Hospital of Philadelphia)で、亡くなった子どものドナーから両手を移植されていた。

 医学誌「ランセット・チャイルド・アンド・アドレセント・ヘルス(The Lancet Child & Adolescent Health)」のオンライン版に載った術後初めての経過報告で、同病院のサンドラ・アマラル(Sandra Amaral)医師は、ハービー君について「手術から1年半後、以前よりも他の人に頼らなくて済むようになり、日々の活動を十分こなせている」と明かしている。

 自分の体に残されていた靱帯(じんたい)を用いて、手術から数日で指を動かせるようになった。8か月後には、はさみを使ったり、クレヨンで絵を描いたりできるようになった。

 両手を使って野球のバットを振ることも、1年もたたない間にできていた。昨年8月には米大リーグ(MLB)のボルティモア・オリオールズ(Baltimore Orioles)の試合で始球式も行った。

 ハービー君は手術前、うんていにぶらさがったり、バットを握ったりしたいと話していた。

 論文によると、ハービー君の脳が新しい両手に適応し、動きの制御や感覚に関わる新たな神経回路が発達していることも検査画像から判明したという。

 医師らは子どもの手の移植手術が普及するには研究がさらに必要としながらも、この手術は「十分な配慮がされる中で成功している」と記している。

 手の移植手術は成人では1998年に初成功している。(c)AFP