【7月5日 AFP】イタリア政府は4日、オーストリアが移民の入国を阻止するため国境地帯に兵士を派遣すると警告したことを受けて、駐伊オーストリア大使を呼び出してこれに抗議した。今年に入ってから地中海(Mediterranean Sea)を渡った移民が10万人に達する中、この欧州移民危機をめぐり両国間に新たな緊張が生じている。

 事の発端は3日、オーストリアのハンス・ペーター・ドスコツィル(Hans Peter Doskozil)国防相が、移民の流入に歯止めがかからないなら対イタリア国境を閉鎖し、警備のため兵士を派遣すると発言したことにある。

 オーストリア当局によると、イタリアに膨大な数の移民が到着する一方、イタリア側から国境を越えてオーストリアに入る移民の急増はこのところ見られていないとしている。それでもセバスティアン・クルツ(Sebastian Kurz)オーストリア外相は、アルプス(Alps)山脈を経由して両国を結ぶ要路となっているブレンナー(Brenner)峠に言及し、「われわれは備えを進めており、必要に応じてブレンナーの国境を防衛する」と警告した。

 ブレンナーの国境は、欧州で旅券なしでの自由な往来を認めるシェンゲン協定(Schengen Agreement)に基づいて開放されている。オーストリアのチロル(Tyrol)州警察によれば、ここ数週間のブレンナー峠経由での入国者数は1日当たり15~40人だという。

 マルコ・ミンニーティ(Marco Minniti)伊内相は、ドスコツィル氏の警告は「不当な前代未聞の動き」だと非難し、「直ちに撤回されなければ」両国間の安全保障協力に影響が及ぶと述べた。

 国連(UN)傘下の国際移住機関(IOM)によると、今年に入ってから欧州に到着した移民は10万人を超え、危険を顧みずに地中海を渡ろうとして死亡した人の数はおよそ2250人に上っている。欧州入りした移民の大半が、内戦下のリビアから出航したサハラ以南のアフリカ出身者だ。

 年初来の到着者の85%近くを受け入れているイタリアは対応に苦慮しているとして、欧州連合(EU)加盟諸国に支援を求めている。(c)AFP/Ella IDE