■刑務所内でパーティー、動画拡散

 西部ハリスコ(Jalisco)州の刑務所では、パーティーを楽しむ受刑者たちの動画がソーシャルメディアで拡散され話題となった。パーティーを主催したのは反社会勢力グループのボスで、受刑者らはこのボスをたたえるバンドのコンサートを見ながら、アルコール片手に騒いでいた。

 別の動画では、ライバル組織のメンバーに女性用下着を着用させ、監房のそうじをさせる受刑者もみられた。

 また最近では、受刑者の80パーセントが「湾岸カルテル(Gulf Cartel)」のメンバーで占められるタマウリパス州の刑務所から銃やトンネルが発見されている。

 2年前のグスマン受刑者の衝撃的な脱走事件は記憶に新しい。掘ったトンネルを通り看守の目をすり抜け、最も厳重な警備体制の敷かれた刑務所から脱走し、その後数か月間にわたり逃走を続けた。グスマン受刑者は2001年にも刑務所から脱走している。

 メキシコの経済調査教育センター(Center for Research and Teaching in Economics)のカタリナ・ペレス(Catalina Perez)氏は、このような刑務所の実情や、昨年2月に北部モンテレイのトポチコ(Topo Chico)刑務所で発生し49人が死亡したギャング抗争などは「刑務所内のシステムに存在する腐敗」によって起きていると指摘する。

「(刑務所内には)誰も解決しようとしない腐敗が多く存在する」と、ペレス氏は話し、「カネを払って豪華な監房に入り、欲しいものは何でも手に入れられる受刑者と、トイレ掃除をする羽目に陥る貧しい受刑者に分かれている」(ペレス氏)

 メキシコ国家人権委員会(CNDH)は今年5月、「犯罪組織と関係している、あるいは金銭的に裕福な受刑者が増加している」なか、犯罪組織が刑務所内で実権を握っていたり、一部権力を掌握していたりする状況は悪化しているとの懸念を改めて示した。

 メキシコ議会は昨年6月、有罪判決を受けた受刑者が刑務所に収容される代わりに、被害者への損害賠償や地域活動を行うことで罪を償うことのできる法律を可決。犯罪者の社会復帰を促し、刑務所内の混雑を緩和することを目的としたものだが、施行は遅れている。

 一方、人権団体などは罪を償った元受刑者の社会復帰に対し、受け入れる人々の教育が遅れていることに懸念を抱いている。

 受刑者の社会復帰を補助する団体「プロモーション・フォー・ピース(Promotion for Peace)」のコンスエロ・バヌエロ(Consuelo Banuelos)氏は、「地元での悪評が先行し、出所した人が職を見つけられず、差別の対象となっている場合、終わりのない悪循環に陥ってしまう」と指摘している。(c)AFP/ Yussel GONZALEZ