【6月23日 AFP】一部種類のクジラは、20世紀の商業捕鯨による個体数急減に至るまでの数十年間で、平均体長が数メートル縮小していたことが分かった。研究論文が22日、発表された。

 米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に発表された研究によると、この傾向が商業漁業の対象となっている他の海洋生物種にも当てはまるなら、体長の縮小が、保護措置の必要性を知らせる早期の警報として機能する可能性があるという。ひとたび個体群が崩壊すれば、その回復は困難を極める。

 18世紀から捕獲の対象となっていたクジラ種の多くは、1986年の「商業捕鯨モラトリアム」によって絶滅から救われた。しかし、抜け穴が多いこの措置の下では、今なお毎年1000頭以上のクジラが捕殺されているのが現状だ。

 スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)のクリストファー・クレメンツ(Christopher Clements)氏率いる研究チームは、国際捕鯨委員会(IWC)がまとめたクジラの体長や捕獲数などを含む年次記録を、1900年前後までさかのぼって詳細に調べた。この頃に、それまでの「狩り」を大量捕獲に転換させる新たな技術が登場した。

「商業捕鯨が行われていたこの期間中に、捕獲されたクジラの平均体長が70年間で最大4メートル減と劇的に縮小したことが、今回の研究で明らかになった」と、論文は指摘している。

 学術誌「Marine Fisheries Review」に最近掲載された個体数調査によると、20世紀中に商業捕鯨によって姿を消したクジラの数は300万頭近くに上るという。