■オーディエンスの拡大

 スリンクレイスは、この楽曲について、サーミだということを理由に上着に火を付けられた少女に関する記事を読み、怒りにかられて歌詞を書いたと語った。

 彼と同じ北部サーミの方言を話す人は2万人以下。スリンクレイスは、オーディエンスが限定されてしまうリスクを認識している。しかし、たとえ歌詞の意味がわからなくても、自分の音楽はオーディエンスを引き付けているんだと喜びをにじませた。

 スリンクレイスは当初、言語の保存についてはあまり考えていなかった。だが一定のファン層を確立したため、借り物のノルウェー語や英語ではなく、サーミ語再生のためにより力を注ぐことに決めたと語った。またそれと同時にノルウェー語での初のEP制作にも取り組んでいる。

 ノルウェー政府は何十年もの間、先住民を腕づくで統合しようとしてきたが、彼や仲間のアーティストたちは、ノルウェーのサーミ文化を盛り上げようとしているのだとスリンクレイスは語った。「くだらないことかもしれないけど、ここぞヒップスターの役割なんだ。今では多くの子どもたちが、自分はサーミだと堂々と言える。誇りに思っているんだ」(c)AFP/Shaun TANDON