【6月16日 AFP】米ボストン(Boston)北郊外にあるおしゃれな家族向け住宅地メルローズ(Melrose)の大きな家に住んでいるミミさん(40)とジョーさん(39)夫妻。

 ルメイ(Lemay)家では、ようやくよちよち歩きを卒業したばかりの幼い子がふさぎ込んだ様子で、何か月も、何度も、同じ言葉を繰り返していた。「違うよ。僕は女の子じゃない。男の子だ」。この言葉によってルメイ家は、「ミア」が「ジェイコブ」になるべきだと悟った。

 ルメイ夫妻には8歳と4歳の娘、それに7歳の息子がいる。息子は2010年に生まれ、ミアと名付けたが、4歳のときに公式にジェイコブと改名した。

 米国でトランスジェンダー(性別越境者)の生徒・学生のトイレ使用を保護する連邦政府の指針をドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が撤回し、議論が再燃したとき、ルメイ家はこの出来事が自分たち家族にどんな動揺を与えたか、また同じ体験をくぐり抜けている人々にどれほど安心や助けを差し伸べることができるか、といった話を公にして分かち合うことにした。

 公式な統計はないが、子どもの性の変更は米国の数百家庭に影響を与えている。

「ミア」だったジェイコブ君の希望をルメイ家が受け入れてから約3年がたつ。知り合いもジェイコブ君のことをおおむね受け入れているが、母親のミミさんは「困難なとき」や「真の悲しみの日々」があったとも言う。「うれしくもあり悲しくもあります。自分の子どもが満足するのを見るのは大きな喜びですが、世間の敵意に対する心配も大きいです」と彼女はAFPの取材に語った。

「それに喪失感もあるのです。自分ではこうだと思っていた相手がそうではなく、でもその姿が自分の心の中になお存在し続けているのです」。だが、ルメイ家はまったく後悔していない。

 ユダヤ教の超正統派のコミュニティーで育ったミミさんは、大人になってそこを去った。息子が性別を変更するにあたって、自らの反抗の経験が役立ったと語る。