【5月12日 AFP】ロシアに本社を置く世界的なITセキュリティー大手カスペルスキー(Kaspersky Lab)について、米情報当局のトップ6人は11日の米上院の公聴会で、ロシアの企業であることを理由に疑念を表明した。

 米国に対する外部からの脅威に関する上院情報特別委員会(Select Committee on Intelligence)の公聴会には、米連邦捜査局(FBI)、国防情報局(DIA)、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)、国家地理空間情報局(NGA)の各機関の長官・局長と、ダン・コーツ(Dan Coats)国家情報長官(DNI)が出席し、カスペルスキーの存在感が広がっていることへの懸念を証言した。ただ、具体的に何を脅威と見ているかについては明言しなかった。

 アンドリュー・マッケイブ(Andrew McCabe)FBI長官代行は、カスペルスキーのソフトウエアに関連したセキュリティー上の脅威を認識しているかと問われ、「非常に懸念しており、しっかり重点を置いて取り組んでいる」と述べた。

 ビンセント・スチュワート(Vincent Stewart)DIA長官は、局内ではカスペルスキー製品の使用を避けており、委託業者でも使用されていないと証言。マイケル・ロジャーズ(Michael Rogers)NSA局長も、カスペルスキー問題について「個人的に認識しており、NSA局長として関与している」と語った。

 カスペルスキーはロシア軍関係の仕事をしていたコンピュータ技術者、ユージン・カスペルスキー(Eugene Kaspersky)氏によって1997年にモスクワ(Moscow)で設立され、急速に世界的企業に成長した。同社ウェブサイトによれば社員数は3600人、ユーザー数は4億人に上り、収益は2015年時点で約6億2000万ドル(約706億円)となっている。ウイルス対策ソフトでは、個人・企業コンピューター向けとも常に人気トップ5位にランク入りしている。

 しかし、カスペルスキーにはロシアの国防・情報当局とつながりがあるとみられる人物が社員として複数採用されていることから、米当局者らは疑念を表明。特に、疑わしいソフトやマルウエア(悪意のあるソフトウエア)を介して外国のハッカーが米国のインフラに侵入する可能性を脅威と見ている。

 カスペルスキーはあらゆる国家政府との関連を否定。11日、「わが社は世界のどの政府のスパイ活動も支援したことはないし、する気もない」「確たる証拠もなく、このような虚偽の申し立てで不当に非難されることは全く受け入れられない」とする声明を発表した。(c)AFP