【5月5日 AFP】インドネシア・ゴロンタロ(Gorontalo)州に住む1歳6か月のサルサ・ジャファルちゃんは、リボンの付いたキラキラ光る金色のティアラと光沢のある紫のドレスを着てこの「特別な日」を迎えた──割礼を受ける日だ。

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 この日の儀式のため、質素な家には親戚一同が集まった。地元の民間療法士がサルサちゃんに白いシーツをかぶせ、女性器の包皮から皮膚片を小さく切り取ると、家の中には大きな泣き声が響き渡った。

 陰核の包皮のごく一部を切り取ると、療法士はナイフをレモンに突き刺した。割礼が終わった合図だ。これで晴れてサルサちゃんはイスラム教徒になったことになる。小さな皮膚片を見て療法士は、ニンニクの皮のようだとつぶやいた。

 AFPの取材に応じた父親のアルジュン・ジャファルさん(23)は、2月に行われた儀式について、「娘が泣き叫ぶのを見ているのはつらかった。でも、これは習わしだから」と語った。

 イスラム教徒人口が世界で最も多いインドネシアでは、女性器切除(FGM、女子割礼)は何世代にもわたって続けられてきた。この慣習をめぐっては、現在においても大人になるための通過儀礼と広く考えられている。

 国連(UN)はFGMを非難している。インドネシア政府も一度は禁止を試みた。しかし、宗教団体からの反対や、一般社会にひろく普及している事実から、いまだ廃止には至っていない。

 インドネシア国内でFGMが最も一般的に行われているのは、中部スラウェシ(Sulawesi)島の保守的な一部地域。ここでの割礼は通常、入念に準備された儀式と祝典を伴う。

 政府の調査によると、ゴロンタロ州の場合、11歳以下の女児の推定80%以上がFGMを受けているという。インドネシア全体では同50%となっており、その数字が突出していることが分かる。

 FGMをめぐっては、女児に苦痛を与えるものとして、国内外で反対の声が高まっている。しかし、貧しいコメ農家が多いゴロンタロ州ではこれを義務とみなす向きがある。