■街角には誰でも利用できる冷蔵庫

 クローネン氏の試算によると、4年前にイナチュラを設立して以来、焼却炉行きを免れた商品は約580トンに上るという。世界自然保護基金(WWF)によると、ドイツで廃棄されている食品は、年間1800万トン以上。1秒間に313キロの食品が廃棄されている計算になる。

 ケルンから約600キロ離れたベルリン(Berlin)北東部プレンツラウアーベルク(Prenzlauer Berg)地区に住むフェンジャさんは、廃棄される食品の減少にほんの少しだけ貢献している。活動で利用しているのは、アパートの中庭に置かれた古い冷蔵庫だ。

 フェンジャさんは、フダンソウとルッコラをこの冷蔵庫の中に入れると、インターネットサイト「フードシェアリング(Foodsharing)」にそのことを書き込み、他のユーザーに知らせた。隣人のシルビアさんは、玉ねぎ1キロとローズマリー少々を入れていた。

 この冷蔵庫に入っている物は誰でも持って行くことができる。ドイツ国内にはこうした冷蔵庫や寄付スポットがあり、その数は大都市を中心に300か所にまで増えている。どれも利用方法は同じだ。

 この仕組みが始まったのは5年前。「私たちは8000トン以上の食べ物を廃棄から救った」と、フードシェアリング創設者の一人、フランク・ボウインケルマン(Frank Bowinkelmann)氏は言う。

 欧米諸国で食品が驚くほど大量に廃棄されているのは、消費者だけの責任ではないと同氏は主張する。メーカーや小売店は小麦をキロ単位、あるいはジャガイモを袋単位で販売するが、購入する側の消費者はそのうちの少量しか必要としていない場合が多いからだ。

「どれだけの商品が結局ごみになると思いますか? メーカーも成長する必要がある」──そうウインケルマン氏は改善を呼びかけた。(c)AFP/Yannick PASQUET