【4月11日 AFP】フィギュアスケートの元世界女王、浅田真央(Mao Asada)が現役引退するという衝撃の発表から一夜明けた11日、国内では同選手に対する感謝の声が相次いだ。

 2008年、2010年、2014年の世界選手権(ISU World Figure Skating Championships)でタイトルを獲得した26歳の浅田が、自身の公式ブログでスケートを離れると表明したニュースは、各テレビ局で一斉に速報で伝えられた。

 浅田の現役引退は同日の朝までにNHKがトップニュースとして伝えるなど、朝鮮半島との間に増大している政治的緊張までも追いやった。

 主要新聞各社が1面で引退発表を取り上げる一方で、スポーツ紙は「ありがとう、真央」や「ありがとう、大好きな真央」という見出しで、同選手への感情を表していた。

 政府もこのニュースに反応を示しており、安倍晋三(Shinzo Abe)首相の右腕である菅義偉(Yoshihide Suga)官房長官は、午前中の定例会見で、「スケートの魅力を凝縮させたような演技で、多くの国民の心を魅了した選手」と述べた。

 2010年のバンクーバー冬季五輪で韓国の金妍児(Yu-Na Kim、キム・ヨナ)氏に次ぐ銀メダリストとなった浅田は、五輪で表彰台の中央に上ったことは一度もなかったものの、そのことはファンにとっては何の問題でもなかったとみられる。

 2020年東京五輪の責任者である丸川珠代(Tamayo Marukawa)五輪相も、「五輪では金メダルを取れなかったが、彼女の存在や輝きは金メダルだったと思う」と称賛した。

 浅田の引退に対して、テレビコメンテーターと同様に他のアスリートも反応を示しており、サッカー日本代表でイタリア・セリエAのインテル(Inter Milan)に所属する長友佑都(Yuto Nagatomo)は、「アスリートとして華があり、人間的にも魅力的なオーラがある。個人的にすごく好きな選手だった」とツイッター(Twitter)につづった。

 浅田とともに2010年のバンクーバー冬季五輪に出場したフィギュアスケーターの織田信成(Nobunari Oda)氏は、テレビ番組の生放送で涙を流しながら「すごく寂しい」とコメントした。

 浅田は最後に女王の座に君臨した世界選手権を終えてから、疲労を理由に1年間の休養期間に入った。しかし、2015-16シーズンに復帰して以降は成績が急降下をたどり始め、昨年12月の全日本フィギュアスケート選手権(Japan Figure Skating Championships 2016)では12位という屈辱の結果に終わった。

 15歳にして圧巻の優勝を果たしたグランプリ(GP)ファイナルを含め、10代の頃から浅田のスケートを見守ってきた日本人の多くが同選手に親近感を覚えている。しかし、国民の愛情を間違いなく決定づけたのは、2014年ソチ冬季五輪でショートプログラム(SP)の演技に失敗した後の姿だった。

 重圧の緊張感に包まれる中で臨んだフリースケーティング(FS)で、浅田は完璧なパフォーマンスを披露する復活を遂げた。メダルには届かなかったものの、日本中が浅田を通して、逆境の中でも決してあきらめないという国民性を見いだした。(c)AFP