【3月24日 AFP】イタリア南部シチリア(Sicily)島の旅行会社が、マフィアにゆかりのある場所を訪れる「マフィアツアー」を企画して売り出した。会社側はマフィア問題について啓発するものだとしているが、地元当局や犠牲者の遺族らからは組織犯罪を美化するものだと激しい非難の声が上がっている。

 ツアーを企画したのはシチリアの旅行会社「イージートラパニ(Easy Trapani)」。マフィア関連の博物館、悪名高いマフィアのボスがかつて住んでいた家、映画『ゴッドファーザー(Godfather)』で有名になった町コルレオーネ(Corleone)などを半日または1日かけて回る。

 ツアーの責任者はウェブサイトで、このツアーはマフィア問題に対する参加者の認識を深めることになるので、本質的には「反マフィアツアー」だと説明している。

 しかし、反マフィア運動の活動家らは強く反発している。マフィア撲滅に尽力するも、1992年にマフィアの手で爆殺されたジョバンニ・ファルコーネ(Giovanni Falcone)判事の姉のマリア(Maria Falcone)さんは22日、「犠牲者の苦しみを侮辱し、マフィア文化を撲滅するために日々奮闘している人たちの面目をつぶすものだ」と非難した。

 イタリアの日刊紙レプブリカ(La Repubblica)によると、トラパニ町のビト・ダミアーノ(Vito Damiano)町長も「狂気の沙汰。町全体に対する侮辱だ」と激怒。この旅行会社のウェブサイトの閉鎖を要求している。

 ツアーには、マフィアに関する記事を執筆したジャーナリストとの懇談、マフィアの「ボス中のボス」とされたサルバトーレ・トト・リーナ(Salvatore "Toto" Riina)、敵を片っ端から殺害したことで「トラクター」の異名を取ったベルナルド・プロベンツァーノ(Bernardo Provenzano)が住んでいた家への訪問なども含まれる。

 また1993年から逃亡を続け、現在のシチリア・マフィアのボスと考えられているマッテオ・メッシーナ・デナーロ(Matteo Messina Denaro)が生まれたカステルベトラーノ(Castelvetrano)に立ち寄ることも可能。(c)AFP