【3月16日 AFP】抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)薬を服用している患者の体内には、AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)の原因となるHIVが潜伏できる「隠れ家」を提供している白血球が存在する。これまで検出が困難だったこの白血球を特定する方法を発見したとの研究論文を、仏研究チームが15日、発表した。

 HIVが潜伏する「宿主細胞」を特定し、さらには無力化することは、AIDSとその原因となるHIVの根絶を目指す研究における長年の至上目標となっている。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された研究に参加したフランス国立科学研究センター(CNRS)は、今回の発見が「ウイルスの宿主細胞に関する根本的な理解向上への道を開く」としている。

 CNRSは声明で、「長期的には、潜在ウイルスの排除を目指す治療戦略につながるはずだ」と続けている。

 HIVを完治させる方法は今のところなく、感染患者はウイルスを抑える薬を一生飲み続けなければならない。その理由は「CD4-Tリンパ球」と呼ばれる免疫細胞のうちの少数が、HIVに隠れ家を提供するからだ。ここに潜伏したHIVは、たとえ数十年後でも治療を中断すると再出現し、拡散することができる。

 研究チームはHIV患者の血液を用いた実験で、ウイルスに感染した宿主細胞の表面に「CD32a」と呼ばれるタンパク質が存在することを発見した。CD32aは正常細胞には存在しない。

 HIV陽性患者の体内にあるCD4-T細胞約2000億個のうち、100万個に1個だけがウイルスの隠れ家として機能する。これは、血液サンプル100ミリリットルに含まれるCD4-T細胞約8000万個のうち、ウイルスの宿主となると考えられるのは80個ほどにすぎないことを意味する。

 HIVがCD4-T細胞内に潜伏できるようにすることに、CD32aが積極的な役割を果たしているかどうかは、大きな問題だ。もしそうだとすれば、HIVの潜伏プロセスを阻止する薬剤の標的として期待ができる。(c)AFP